この記事は 7 分で読めます

マーケティング戦略策定に役立つPEST分析とは?やり方とコツを紹介

URLをコピーする

皆さんは「PEST分析」をご存知ですか?有名なビジネスフレームワークではありますが、分析方法などをきちんと理解して活用できている方は多くはないかもしれません。

そこで今回は、PEST分析の概要や分析の進め方・コツを紹介します。

PEST分析とは、外部環境が自社に与える影響を分析するフレームワークのこと

PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境のうち、マクロ環境が、現在・未来において自社にどのような影響を与えるかを予測するためのフレームワークです。マクロ環境とは、企業が直接コントロールすることが難しい、広範囲で長期的な環境要因を指します。

これは、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラー氏が提唱したもので、外部環境を政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの側面で分析することから、4つの頭文字を取って「PEST」分析と呼ばれています。

PEST分析を行う目的

PEST分析は、マーケティング戦略や事業戦略の方向性を決定する際に役立ちます。自社を取り巻く環境が大きく変化する中で、どのような市場をターゲットとし、どのような価値を提供していくべきかを考える上で、PEST分析で得た結果は重要な手がかりとなるでしょう。

また、PEST分析を活用することで、自社に降りかかるリスクとチャンスを中長期的に予測することができます。潜在的なリスクを特定し、それに対する適切な対策を講じたり、チャンスを活かす戦略を練ったりする上でも、PEST分析は重要です。

さらに、新たな業界への参入を考える際には、PEST分析を用いた市場変化の予測が役立ちます。市場の将来性を考え、業界内での新たな機会を発見するために活用しましょう。

PEST分析の4要素と具体例

PEST分析の「政治」、「経済」、「社会」、「技術」の4つの要素について、詳しく見ていきましょう。それぞれが自社に与える影響を具体的に検討することで、潜在的なリスクとチャンスを明らかにすることができます。

政治的要因(Politics)

政治的要因は、法律や規制、税制、政府の方針など、政治に関連する要因を指します。これらの要因は、企業の事業活動に直接的な影響を与える可能性があります。

例えば、環境規制の強化や、新たな安全基準の導入は、企業にとってコスト増加のリスクとなる一方で、環境に配慮した新製品の開発など、新たなビジネスチャンスにもつながります。また、補助金や優遇税制などの政府の支援策は、特定の産業や事業の成長を後押しする効果があります。

経済的要因(Economy)

経済的要因は、経済成長率、物価、為替レート、雇用情勢など、経済に関連する要因を指します。これらの要因は、消費者の購買行動や企業の投資意欲に影響を与えます。

例えば、景気後退の局面では、消費者の節約志向が強まり、高価格帯の製品の売上が落ち込む可能性があります。また、為替レートの変動は輸出企業の収益性に直結します。

社会的要因(Society)

社会的要因は、人口の変動、ライフスタイル、価値観など、社会に関連する要因を指します。これらの要因は、消費者ニーズの変化や新たな市場の出現につながります。

例えば、少子高齢化の進展は、ヘルスケア市場の拡大や高齢者向けサービスの需要の増加をもたらします。また、環境意識の高まりは、エコ製品への需要を高め、企業の環境対応を促します。ダイバーシティの重要性が増す中、多様な人材の活躍を支援する製品やサービスのニーズも高まっています。

技術的要因(Technology)

技術的要因は、技術革新、研究開発、特許など、技術に関連する要因を指します。これらの要因は、企業の競争力の源であるとともに、新たな事業機会を生み出します。

例えば、AI、IoT、ビッグデータなどのデジタル技術の進歩は、様々な産業における革新を生み出しています。また、昨今では、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーや電気自動車関連の技術開発が加速しています。さらに、バイオテクノロジーの発展は、医療や農業分野に大きな変革をもたらしつつあります。

PEST分析の進め方

1. 目的を明確にする

PEST分析を始める前には、まず分析の目的を明確にすることが重要です。例えば、新規事業の立ち上げ、海外市場への進出、中期経営計画の策定など、分析の目的によって、着目すべき要因や情報の範囲は異なります。

また、分析対象とする業界や市場の範囲を決めることも重要です。具体的かつ明確な目的と、その目的に対して適切な分析の範囲を定めましょう。

2. 外部環境に関する情報を収集して「PEST」に振り分ける

続いて「PEST」に基づいて、自社を取り巻くマクロ環境に関する情報を収集します。正確な情報を収集するためにも、政府の統計データや国際機関の報告、信頼性の高い市場調査会社のレポートや専門誌など、信頼できる情報源から幅広くデータを収集しましょう。自社で保有するデータや、顧客からのフィードバックなどを活用するのも良いでしょう。

このとき、「PEST」の4つの側面において、自社に影響を及ぼすものに絞りましょう。精査できたら、4つの要因のどれに当てはまるのかを振り分けます。

政治的要因(Politics) ・法律や条例、規制などの行政レベルでの変化
例)法改正・規制緩和、補助金・交付金の制度変化、政治動向 etc.
経済的要因(Economy) ・経済成長や景気、物価や為替動向などの経済の動向変化
例)景気・賃金動向、物価・消費動向、為替・株価・金利の変化 etc.
社会的要因(Society) ・生活者のライフスタイルや意識の変化
例)人口動態変化、社会インフラ・ライフスタイルの変化、流行 etc.
技術的要因(Technology) ・設計・生産や研究開発、マーケティングなどに関わる技術の変化
例)新技術の発展・浸透、知的財産の発明・保有 etc.

3. 「事実」と「解釈」に分類する

「PEST」の4要素に振り分けた情報を、「事実」と「解釈」へ分類していきます。PEST分析では、「事実」のみを使用します。

事実 ・実際に起こっていること、明確なデータがあり確実であること
例)業界全体での売上が落ちている、物価が上がっている
解釈 ・主観や個人的な考えを含むこと
例)物価の高騰による値上げが原因で利用者が減り、業界全体で売上が落ちている

 
ここで、主観や個人的な思い込みが入った「解釈」を取り入れてしまわないように注意しましょう。特にインターネットには不確かな情報が多いため、その情報が「事実」であるのかどうか、情報源についてもしっかり確認しましょう。

4. 事実を「機会」と「脅威」に分類する

3のステップで収集した「事実」のみを採用し、今度は「機会」と「脅威」に分類します。

機会 自社にとって有利・ポジティブな情報、チャンスとなり得るもの
脅威 自社にとって不利・ネガティブな情報、リスクとなる得るもの

 
業界全体にとって「機会」であっても、自社にとっては「脅威」であるということもあります。「機会」と「脅威」を考えるときは、あくまでも一般的な考えではなく、自社にとってどうなのかを軸にすることが大切です。

下表は分類方法の一例です。

政治的要因 経済的要因 社会的要因 技術的要因
機会 交付金制度開始 株価上昇 インフラ構築 データ活用
脅威 税率引き上げ 景気上昇の鈍化 人口減少 AIの発達

 
一見「脅威」に思える要因も、視点を変えることで「機会」になる可能性があり、もちろんその逆もあり得ます。

PESTに基づいて情報収集したマクロ環境の変化を解釈する際には、単に「機会」と「脅威」に分類するだけではなく、「脅威を機会に変えられないか」という視点を意識することが大切です。広い視野を持って考えましょう。

5. 長期と短期に分類する

自社にとっての「機会」と「脅威」を分類できたら、次はその「機会」「脅威」から影響を受ける期間が長期に渡るのか短期で変化していくのかを分類していきましょう。

自社を取り巻く環境は、絶えず変化していくものです。分析するタイミングによっても結果は変わってくるため、現時点での「機会」「脅威」がいつまで影響を及ぼすのかを見極めることが大切です。時系列や影響範囲を考慮することで、戦略を考える際の優先度や対策がより明確になります。

また、「短期ではあるけれど、周期的にまた起こる」といったパターンも考えられますので、慎重に判断しましょう。

6. 分析結果を戦略に落とし込む

最後に、PEST分析の結果を自社の戦略に反映させます。PEST分析は、分析そのものを行うだけでは役には立ちません。肝心なのは、ここまでの分析結果をもとに、事業やマーケティングの戦略を立てて、実行に移すことです。

マクロ環境の変化のすべてを自社の戦略に反映させることは難しいため、将来の環境変化を予測し、優先順位を付ける必要があります。「脅威」を避けつつ、「機会」を活かせるように、長期・短期のどちらで考えるべきかや、緊急性・重要度なども考慮しながら、自社の方針を定めていきましょう。

PEST分析を行う際のコツと注意点

偏った情報収集は避ける

PEST分析では、信頼性の高い情報源から得られた客観的なデータに基づいて分析を行うことで、より正確な結果を得ることができます。情報収集の際には、その情報の信頼性を十分に確認しましょう。一つの情報だけを参考にしたり、偏った情報源に依存することがないよう、注意が必要です。

メディア報道や専門家の見解など、主観的な情報にも一定の価値はありますが、それらの情報を鵜呑みにせず、複数の情報源から得られた情報を比較・検討することが重要です。自社で収集したデータや、政府機関・業界団体等の公的な統計データを活用することが望ましいでしょう。

また、過去のデータは有用なものではありますが、あまり過去のデータに固執しないようにも注意しましょう。市場のトレンドや技術の進展は速いため、最新の情報を取り入れ、定期的に更新することで、未来に向けた分析を行うことが大切です。

短期計画には活用しない

PEST分析は、「PEST」の4要素からも分かるように、自社を取り巻く環境の中でも、大きな規模の要因を判断基準とします。これらの多くは、基本的に数週間〜数ヶ月の単位ではなく、数年をかけて変化していくものといえます。そのため、PEST分析は直近の計画よりも、中長期的な戦略を立てる際に有効なものであることを覚えておきましょう。

例えば、為替レートの短期的な変動に一喜一憂するのではなく、中長期的なトレンドを見据えて、為替変動が自社の事業に与える影響を分析する必要があります。また、技術革新のスピードが速い分野では、現在の技術動向だけでなく、将来の技術の発展方向を予測することが求められます。

各要素の相互作用にも注目する

PEST分析の4つの要素は、互いに独立しているのではなく、互いに影響を与える関係にあります。例えば、政治的な決定が経済に影響を与え、社会の変化が新たな技術の開発を促すこともあります。

したがって、各要素を個別に分析するだけでなく、要素間の相互作用にも注目することが重要です。要素間の複雑な関係性を理解することで、より立体的な分析が可能になります。

分析は定期的に行う

外部環境は常に変化し続けています。そのため、PEST分析は一度実施すれば終わりというものではありません。定期的に分析を行い、環境変化を継続的に見ていくことが重要です。

分析の頻度は、自社を取り巻く環境の変化のスピードに応じて決定しましょう。変化の速い業界では、より高い頻度で分析を行う必要があります。また、自然災害や感染症の流行など、予期せぬ出来事をきっかけに突然環境が変化することもあります。分析結果を経営戦略の見直しに活用することで、環境の変化にも柔軟に適応しましょう。

 
 
最後に、新規事業への参入の際には、ぜひ弊社が提供する 営業リスト作成ツール「Musubu」をご活用ください。
業界や企業規模、設立年月から現在求人を出している企業まで、細かなセグメントでのリスト作成が可能です。
営業リスト作成ツール「Musubu」の詳細をみる

監修

Baseconnect株式会社 マーケティングチーム マネージャー

河村 和紀(かわむら かずき)大手人材紹介会社に新卒入社。その後、Webメディア「ferret」を運営する株式会社ベーシックに入社。営業、営業企画、イベントマーケを経て、マーケティングマネージャーに就任。
2022年、Baseconnect株式会社に参画。イベントを中心とした、ユーザーとのコミュニケーション領域を管轄する。

主な寄稿実績『マーケター1年目の教科書』、『MarkeZine(マーケジン) vol.66

 

マーケティングおすすめの記事

2020年7月22日

【マーケティングに必須】市場分析とは?フレームワークも併せて紹介

2020年4月28日

製品戦略(プロダクト戦略)とは?具体的なフレームワークも紹介

2018年8月1日

無料のマーケティングオートメーション(MA)ツール4選!簡単に使いこなそう