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【事例紹介】ゲーミフィケーションで参加者の能動性を高める
みなさんはゲーミフィケーションという言葉をご存じですか。人がゲームに時間を忘れて熱中するように、製品やコンテンツ、あるいは仕事に熱中してほしい、そんな希望を叶えるのに役立つのがゲーミフィケーションです。
本記事ではゲーミフィケーション導入のメリット・デメリットや、導入事例を紹介します。
目次
ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素をゲーム以外の分野に応用する試みのこと
ゲーミフィケーションとは娯楽を目的としたゲームが持つ要素を、ビジネスや教育など娯楽外の分野に応用する試みのことです。こうした試みの目的は、ゲームが持つ「人を熱中させる力」の活用です。
一般に勉強や仕事は真面目にやるもので、ゲームは真面目ではないものと考えられていますが、実はゲームをしているときの方がむしろ、勉強や仕事をするときよりも真剣にやっているという人は多いのではないでしょうか。これはゲームが人を熱中させる力を持っているためであり、ゲーミフィケーションはこの力を他の分野の活動に向けさせることを目的としています。
ゲーミフィケーションに役立つ要素
ゲーミフィケーションはゲームの要素を他分野に応用しますが、特に人を熱中させる要素を挙げると、「目標」「可視化された報酬」「競争」「交流」があります。それぞれについて簡単に説明します。
- 目標…勝利やゴール、ハイスコアなど、プレイヤーがゲームの中で達成することを目指す特定の状況を指します。目標を分かりやすく設定することで、プレイヤーの意欲を継続させられます。
- 可視化された報酬…目標の達成や達成度合いに応じてプレイヤーに与えられるスコアや賞賛などを指します。普段褒められる機会のないような行動に明確な報酬が加わることで、プレイヤーはその行動をもっとしようと動機づけられます。
- 競争…他プレイヤーと結果を競うことを指します。ハイスコアランキングに乗ろうとゲームを頑張るように、同じゲームを遊ぶ他プレイヤーの存在はゲームにより熱中させるきっかけになります。
- 交流…他プレイヤーと行う交流全般を指します。自分のプレイの過程や成果を他プレイヤーと共有したり、互いの成果に賞賛を送りあったりすることは、モチベーションやコンテンツ・組織への愛着を高めます。
シリアスゲーム・教育ゲームとの違い
ゲーミフィケーションと同じ目的を持ったものに、シリアスゲームや教育ゲームと呼ばれるものがあります。
シリアスゲームとは政治的な主張や問題提起など娯楽以外の目的で作られるゲームのことであり、教育ゲームとはその中でも何かしらの知識を教えるために作られたゲームのことです。シリアスゲームや教育ゲームはゲーム以外の分野をゲームに持ち込んだものであり、対してゲーミフィケーションはゲームの要素をゲーム以外の活動に持ち込んだものです。つまり目的は同じですが互いに持ち込む方向が逆なのです。
ただし、シリアスゲームや教育ゲームも含めて、娯楽以外の用途にゲーム的なものを使うこと全般をゲーミフィケーションと呼ぶ場合もあります。
ゲーミフィケーションのメリット
参加者のモチベーションを高められる
ゲーミフィケーションを導入することで、様々な行動に対して結果が可視化され、報酬が与えられ、競争が生まれます。これによって参加者にモチベーションが生まれ、より積極的にそうした行動をさせられるようになります。
ゲーミフィケーションの動機づけは、仕事や購買活動などはもちろん、仕事用具を整頓して並べるなどの些細な行為も対象にできます。このようなやって当たり前とされる行為に敢えてモチベーションを与えることで、やらなかったことを注意するよりも簡単に習慣づけられるかもしれません。
参加者のエンゲージメントを高められる
ゲーミフィケーションによってモチベーションを上げたり、ポジティブな感情を刺激された参加者は、結果を出すことよりもプロセスを楽しむようになります。
さらに、そのように楽しんだ対象に対して人は愛着を抱きやすいため、コンテンツや組織に関わる活動に対して積極的に参加するようになるかもしれません。
目標設定がしやすい
ほとんどのゲームには目標が存在し、プレイヤーはその達成を目指してプレイします。同じように、ゲーミフィケーションは普段の行動に対して明確な目標設定を行うところから始まります。参加者はその目標を意識してプレイするため、何をすべきか迷うことが少なくなります。
ゲーミフィケーションのデメリット
新しいやり方を導入する必要がある
ゲーミフィケーションを導入するということは、多かれ少なかれ今までになかったやり方を導入する必要があり、手間と費用がかかります。さらに今までのやり方に慣れている人は、新しいやり方に拒否感を覚えるかもしれません。
こうした拒否感を払拭するには、ゲーミフィケーションによる効果を示す以上に、わざわざ何かを新たに付け加えてやっていることを忘れさせるような操作感が重要です。
参加者に合わせた課題設定が難しい
一般的に良いゲームというのは、ゲームバランス、つまりプレイヤーの腕前とその向上に合わせた難易度設定が良くできているものです。逆に言えば、ゲームバランスが良くないゲームは、やっていて楽しくないどころかむしろ苦痛な行為になってしまいます。
ゲーミフィケーションでも重要なのはこのゲームバランスです。参加者の想定をしっかりと行い、彼らの腕前に合わせた課題設定をすることができなければ、却って逆効果になります。
報酬に固執するおそれがある
ゲーミフィケーションにおいては、参加者がプロセスを楽しむ前に報酬の獲得に集中してしまうような事態は避けた方が良いでしょう。報酬の獲得に固執した参加者は、報酬のためにチート、つまり不正行為を積極的に始めるかもしれません。
このような事態を避けるには、過度な報酬を出して参加者を釣るような作りにしないようにしましょう。また、相互協力が必要な職場の場合、そもそも競争による報酬を用意するべきではありません。
ゲーミフィケーションを取り入れた事例
スターバックスモバイルアプリ
「スターバックスモバイルアプリ」はコーヒーチェーン店のスターバックスが公式に配布しているアプリで、ユーザーはアプリ上のポイントを貯めることで無料のドリンクやトッピングと交換できます。
このアプリの狙いはユーザーのリピート率向上であり、システムとしてはポイントカードと同じですが、アプリ上でゲージが貯まるため、自身が報酬を獲得したことを視覚的に実感できます。
出典:スターバックス ジャパン公式モバイルアプリ(https://www.starbucks.co.jp/mobile-app/)
Nike Run Club
「Nike Run Club」はスポーツ用品メーカーのNikeが公式に配布しているアプリで、ユーザーはランニングの距離や時間に応じてトロフィーを得たり、記録をシェアしてランキングで確認したりすることができます。
このアプリは報酬によって目標達成を促すだけでなく、オンラインゲーム的な楽しみであるコミュニティー内での競争やシェアなど、交流の要素を持っていることが特徴です。このゲーミフィケーションは即座にNikeの製品購入にはつながりませんが、ランニング人口を増加させ、彼らがNikeのアプリを通じてコミュニティーを作っていることが、最終的にNikeの利益につながると考えられているようです。
出典:Nike Run Club 公式サイト(https://www.nike.com/jp/nrc-app)
ウォルマートの従業員安全訓練
スーパーマーケットチェーンのウォルマートでは、従業員の安全訓練にゲーミフィケーションを取り入れています。フォークリフトを充電している3分の間に、安全訓練を兼ねたゲームを行い、ランキング形式で競わせたのです。これにより、ウォルマートの作業中事故率は大きく減少しました。
マイクロソフトのLanguage Quality Game
ソフトウェア開発会社のマイクロソフトは世界各国にソフトを販売しているため、それぞれの言語に合わせて内容を翻訳する必要があります。そしてその精度を上げるためにゲーミフィケーションが導入されています。
「Language Quality Game」と呼ばれるこのゲーミフィケーション施策は、できあがった翻訳に対してそれぞれの言語チームで間違いがないかを探させ、見つけた分をポイントとして競わせることで、翻訳の精度を上げる動機づけをしています。
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