「バスケット分析」という分析手法をご存知ですか?
小売店舗やECサイトなどでバスケット分析を実施することによって、顧客の意外な購買行動が明らかになる場合があります。
今回はバスケット分析の基本的な考え方や有名な事例、実際の分析に使える指標の例をご紹介します。
目次
バスケット分析で商品が購入される傾向を把握する
バスケット分析とは、小売店舗やECサイトなどの買い物かご(バスケット)1つを1単位とし、一緒に買い物かごに入れられやすい商品を調べる分析手法です。小売店舗ならPOSデータを、ECサイトなら会員ごとの購入履歴をもとにバスケット分析を行えます。
顧客の購買傾向を踏まえた商品配置を行うと、クロスセル(別商品の合わせ買い)の促進や、商品配置の改善、キャンペーン内容やECサイトでの表示の最適化ができます。簡単な例として、「ヨーグルトを購入した顧客は蜂蜜も購入していることが多い」とわかった場合、「ヨーグルトを購入した顧客は、食べるときに同時に入れる何かをあわせて買うことが多い」と予想できます。これを踏まえて蜂蜜の他にも、きなこやバナナなど、同じくヨーグルトとあわせて食べられることが多い食品を近くに配置すると、関連商品の購入促進が期待できます。
商品・ジャンルのどちらで組み合わせとみなすか検討する
バスケット分析を行う際は、どのような商品の購入パターンを「併売されている」とみなすか検討する必要があります。例えば、「乳製品と野菜」のようにカテゴリごとに商品を判断する以外にも、「牛乳ときゅうり」のように特定の商品を購入している場合のみを組み合わせとみなすこともできます。
カテゴリごとに組み合わせを判断する場合と、商品ごとに組み合わせを判断する場合、以下のように結果が大きく異なります。
メリット | デメリット | |
カテゴリごと | 多くの商品が母数に当たるため、精度の高い分析を行える | 詳細は判断しづらい |
商品ごと | 詳細な結果を得られる | 組み合わせのパターンが多いため、母数が少なく、誤差が出やすい |
どちらを採用するか慎重に検討しましょう。
調査対象に入れる商品を慎重に選ぶ
バスケット分析の調査対象となる商品も慎重に選定する必要があります。例えば、飲料水やレジ袋など、「売上が顧客個人の趣味嗜好に依存しないもの」や「元々よく売れるもの」などは除外する必要があります。コンビニの「飲料と飲料」「レジ袋と他商品」の併売傾向を分析しても、得た結果にはほとんど意味がないことが予想できるからです。
また、バスケット分析の結果を踏まえて売り場の配置を変更する際も、顧客にとって違和感のない配置を心がけましょう。
バスケット分析の結果の例:おむつと缶ビールの法則
バスケット分析の有名な例として、「おむつと缶ビールの法則」が挙げられます。
米国の大手スーパーで行われたバスケット分析の結果とされ、
金曜日の夕方に、おむつと缶ビールを同時に購入する30〜40代の男性客が多い
と判明しました。このことから、
仕事を終えてから来店する父親が多く、妻から子供用のおむつの購入を頼まれたついでに自宅で飲む缶ビールを購入する傾向がある
と予測できます。よって、「子供用品と酒類コーナーを以前より近づける」「金曜日は30〜40代の男性が好むおつまみを缶ビールの近くに陳列する」などの施策が考えられます。
その他、「日曜大工店でペンキとローラーを同時購入する人が多い」「食品店でトルティーヤチップスを購入した多くの人が瓶入りサルサソースも購入する」などが有名なバスケット分析の例として挙げられます。
指標を用いて、バスケット分析の結果を評価する
バスケット分析には様々な実施方法があります。商品・カテゴリごとの相関を示すために使用される指標を3つご紹介します。今回は、「おむつと缶ビールの法則」を例に、男性顧客を対象とした以下のケースを想定して考えます。
支持度・期待信頼度
支持度とは、「対象の顧客全体の中で、何割の人が缶ビールとおむつをあわせて買っているかを示す指標」です。
また、期待信頼度とは、「男性客の中で缶ビールを購入する人の割合」「男性客の中でおむつを購入する人の割合」を示します。
今回の場合、支持度と期待信頼度は
となります。支持度が低い商品同士の組み合わせは、あわせ買いする人が少ないため、バスケット分析の結果として採用するにはあまり意味がないと言えます。また、期待信頼度が低い商品はそもそも売れ行きが良くない商品であるため、あまりバスケット分析に採用するべきではありません。
信頼度
信頼度とは、「缶ビールを購入した人の内、何割の人がおむつも購入したか」あるいは「おむつを購入した人の内、何割の人が缶ビールも購入したか」を示す指標です。信頼度と支持度は似ていますが、支持度では分母が「全体の男性客」である一方、信頼度の分母は「缶ビール(おむつ)を購入した人」なので注意が必要です。
今回の場合、のように表されます。「おむつを購入した場合、缶ビールも購入する信頼度」が高いため、「おむつの購入」と「おむつと缶ビールの購入」の間に一定の相関を確認できます。
リフト値
リフト値は、「男性客の中でのおむつを購入する人の割合」(期待信頼度)と「缶ビールを購入する人の中で缶ビールとおむつを購入した人」(信頼度)の比率を表します。つまり、「おむつ(缶ビール)を購入すると、どれだけ缶ビール(おむつ)も購入しやすいか」を表すのがリフト値です。
今回の場合、
となります。一般的にリフト値は1を超えていることが望ましいとされているため、今回のデータを用いると「おむつと缶ビールの間に有意な相関がある」とは断言しづらい結果になります。
いかがでしたか?
「おむつと缶ビール」の例のように顧客の傾向が把握できていると、商品の陳列方法の改善などによってさらなる売上の向上が狙えます。
3つの指標を参考に、バスケット分析を実施しましょう。
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