スモールマスとは｜注目されている背景や実践のポイントについて解説

「スモールマス」という言葉を聞いたことはありますか？これは花王株式会社が提唱した、従来のマスよりも小さいマス（＝スモールマス）に焦点を当てた考え方です。

今回はスモールマスの概要や注目されている背景のほか、実践においての重要なポイントを事例を用いて解説します。

 

スモールマスとは、従来のマスよりも小さい消費者グループのこと

スモールマスとは、化学メーカーの花王が提唱した考え方で、従来のマスよりも小さい消費者のグループのことを指します。

ライフスタイルの変化などから消費者の興味やニーズは多様になり、多数のスモールマスが生まれています。そのため、従来のマス市場を対象とした考え方では消費者の多様なニーズには応えきれません。そこで生まれたのがスモールマスを対象とした戦略です。

スモールマスが注目されている背景

スモールマスが注目されている背景に、市場の成熟や技術の進歩があります。現代では市場が成熟しているため、商品の質や機能に差が少なくなっています。

加えて、インターネットによって誰もが手軽に情報を得られるようになったため、消費者自身で「自分にとってのよいもの」を選べる時代となりました。そのため、「この商品はあなたに向けたものである」と、明確にほかの商品との違いをアピールするスモールマス戦略を立てる必要が出てきたのです。

また、SNSの普及やビッグデータの収集・解析が可能になったことから、スモールマスの年齢層や性別などの詳しい情報の把握と、それに合わせた商品開発が行えるようになりました。さらに、SNSなどの普及は、消費者による情報拡散の機会の増加にもつながりました。これらのことも、スモールマスが注目される理由です。

スモールマス戦略の実践において重要なこと

対象者についての情報を収集すること

まず、自社がアプローチしたい商品を求めるスモールマスが存在するのか、という情報を収集します。さらに、それはどんな人で、どれくらいの規模なのかということも確認する必要があります。スモールマスへアプローチするための情報を収集するにはSNSが適しています。

例えば、スモールマスを提唱した花王の「めぐリズム」では、新生活に臨む人を対象としたキャンペーンを展開しています。このキャンペーンを展開するために、花王ではまずSNSで「新生活」関連の投稿を調べています。そして、そこで見つかった「入学に不安を感じる学生」というスモールマスを把握し、投稿数から規模を確認しました。

こういったSNSでの深掘りは「ソーシャルリスニング」と呼ばれる手法で、この手法によって、新生活にあたってのスモールマスには「入学」のほかにも、「就職」「転居」などがあることも判明しました。これらの調査から、「新生活に臨む人へのリラックスアイテム」は受け入れられる可能性が高いと判断され、キャンペーンが展開されるに至りました。

このように、スモールマス向けの商品を展開するには、対象が抱える不安や不満、ニーズを調べ上げる必要があります。

スモールマスへの伝え方を考えること

収集したスモールマスの情報を元に広告を展開します。この時重要になるのが、対象となる層に自社や商品のファンになってもらうことです。ただし、自社商品について企業自ら発信しても、押し付けがましいイメージを持たれてしまうおそれがあります。

前述の花王「めぐリズム」キャンペーンでは、「入学」「就職」などのスモールマスが「めぐリズム」を利用したことで、自らの不安を解消できたエピソードをSNS上で募りました。集まったエピソードを同じ境遇の人に届けることで、企業が直接発信するよりも共感と興味を引き出すことができたのです。

さらに、SNS上でのエピソード募集を発端に、以下のような情報の循環も発生しました。

1. SNSでの投稿型キャンペーンでエピソードを収集する
2. その投稿を見た人が共感・意見などをさらに発信する
3. 収集したエピソードを電車の中吊り広告として掲出し、情報が届く範囲を広げる
4. 広告に起用したタレントの効果などで、広告の内容に関するSNS投稿を行う人が現れる

これらの流れが発生した結果、「めぐリズム」は前年を上回る売り上げが達成されたということです。

スモールマス市場では、SNSなどWeb上での広告だけでは不十分で、実際の広告も合わせて展開する方が効果が高いとされています。対象となるスモールマスにアプローチするために、何をどのように伝えれば情報の循環が生み出せるのかということを、デジタル・リアル問わずに考える必要があります。

（参考：「めぐリズム キャンペーンページ」https://www.kao.co.jp/megrhythm/campaign/spring2104/）