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エスノグラフィー調査とは|他の調査手法との違いや実施手順などを紹介
エスノグラフィー調査をご存知ですか。商品を使用するユーザーを対象に、生活に密着しその行動を観察する調査手法で、現在はマーケティングなどに活用されています。
この記事では、エスノグラフィー調査の概要やメリット・デメリット、実施手順などを紹介します。
目次
エスノグラフィー調査とは、生活の観察を通じて顧客の行動様式を調査する手法
エスノグラフィーはギリシャ語のethnos(民族)とgraphein(記述)に由来する言葉で、文化人類学などの学術分野における調査手法の一つです。エスノグラフィーでは、調査対象となる文化やコミュニティーに入りこみ、行動観察やインタビューを通じて対象への理解を深めます。
現在ではマーケティングなどの分野でもエスノグラフィーが活用されています。対象者の生活に密着して行動を観察するため、一般的なアンケート調査では入手しにくい価値観や潜在的な問題に基づいたデータを得られるとして、注目されています。
エスノグラフィー調査と他の調査手法の違い
アンケート調査
アンケート調査は、事前に準備した質問を対象者に回答してもらう形式の調査です。一度質問を準備すればすぐに実施でき、インターネットを活用すれば多くの回答を得られるという特徴があります。
対象者の生活に密着するエスノグラフィー調査と異なり、調査の実施コストが低く、なおかつ多くの回答を得られるのがアンケート調査です。
デプスインタビュー調査
デプスインタビュー調査とは、回答者とインタビュアーが1対1で約1時間から1時間半程度の対話を行う調査です。テーマとなる話題に関して長い時間をかけて話を聞くため、回答に対してさらに深堀りができ、回答者の考えや行動の背景となる価値観にアプローチできます。
回答者の行動の背景にアプローチできる点ではエスノグラフィー調査と類似していますが、デプスインタビュー調査では対話を通じて、エスノグラフィー調査では行動の観察を中心に理解を深めるという違いがあります。
エスノグラフィー調査のメリット・デメリット
メリット:定性的なデータを入手でき、潜在的なニーズの発見に繋がる
エスノグラフィー調査では対象者の生活に密着するため、対象者の行動やそのパターンといった定性的なデータを入手できます。また、行動やパターンに至った背景や価値観を洗い出すことで、潜在的な課題やニーズの発見に繋がり、新たな商品・サービスを生み出すきっかけになります。
メリット:先入観やバイアスを排除して調査できる
エスノグラフィー調査では、先入観やバイアスを排除して調査できるというメリットがあります。他の調査方法では回答結果の分析や質問を行う際に先入観やバイアスが入る可能性がありますが、エスノグラフィー調査では対象者の行動を観察するため、先入観が入りにくいという特徴があります。
デメリット:調査のコストが高く、実施難易度が高い
エスノグラフィー調査では一定期間対象者の生活に密着して観察を行うため、時間的なコストがかかるほか、観察を記録するための機材を用意する必要があり、金銭的なコストも発生します。このように、エスノグラフィー調査は多くのコストがかかり、実施難易度が高いというデメリットがあります。
エスノグラフィー調査の実施手順
1. 調査の概要を設定する
調査を実施するためにはまず、調査概要を設定します。設定すべき項目には、調査を行う期間、調査対象者および調査員の人数などのほかに、調査を行う目的や明らかにしたい仮説などが挙げられます。
2. 調査の対象者を決定する
エスノグラフィー調査を行うにあたり、対象者の選定は非常に重要です。エスノグラフィー調査では他の調査方法と異なり、エクストリームユーザーが重要視される傾向があります。
エクストリームユーザーとは商品やサービスに対して両方の意味で極端(エクストリーム)なユーザーのことで、商品・サービスに対して非常に好意的で多く使用するユーザーや、反対に全く使用しないユーザーを指します。
エクストリームユーザーは確固たる価値観を持っており、両者を観察することで新たなニーズや知見が得られる可能性があります。
3. 調査を実施する
調査概要や対象者を決定し終えたあとは、実際に調査を開始します。対象者の素のままの行動を観察できるように、対象者の自宅などで調査を実施しましょう。また、行動の観察に加えてインタビューも実施することが大切です。
4. 調査結果を分析し、レポートを作成する
調査の実施後は、結果を分析しレポートを作成します。複数の対象者の行動観察結果やインタビューを比較して行動の背景や価値観についてディスカッションを繰り返し、背後に潜む課題やニーズの発掘を目指しましょう。