NPS®調査とは何かご存知でしょうか。NPSは顧客満足度と似た言葉として用いられますが、長期的な業績の向上を図るためにはNPSに注目する必要があります。
今回は、NPSの計算方法や調査するときのポイントといった基本を解説します。
※NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc)の登録商標です。
目次
NPS調査とは、顧客が自社をどれだけ他の人に薦めたいか調査すること
NPSとは、顧客ロイヤリティの高さを示す指標で、顧客が自社のことや自社商品・サービスを友人や家族にどれだけ薦めたいかという程度を表します。NPSは「Net Promoter Score」の略で、業績向上に直結する定量的な指標として顧客満足度から置き換わると、現在アメリカで注目されています。
NPS調査では、推奨したいかどうかを0〜10点の11段階に分け、「自社や商品・サービスをご友人、ご家族に薦めたいと思いますか?」という質問で回答者に答えてもらいます。
NPSの計算方法
0〜10点の11段階のうち、点数が低いものから「批判者」「中立者」「推奨者」の3段階に分けます。
- 批判者(0〜6点)
自社ブランドや商品・サービスに対してネガティブな印象を持つ集団です。知り合いにネガティブな情報を広げる可能性が高く、彼らの意見を反映した改善策が求められます。 - 中立者(7〜8点)
中立な立場をとっており、可もなく不可もないと考えているか、そもそもそこまで調査に興味がないという集団です。自社のファンに育てやすい一方で、競合に移ってしまう可能性もはらんでいます。 - 推奨者(9〜10点)
自社ブランドや商品・サービスに対してポジティブな印象を持つ集団です。彼ら自身も新しい商品やサービスを購入する可能性が高いほか、知り合いにポジティブな口コミを広げて新規顧客を連れてきてもらえる可能性もあります。
NPSを計算する際は、調査結果の有効性が薄い中立者の数は直接計算に入れず、推奨者と批判者の割合を用います。ただし、推奨者と批判者の割合は全回答者の人数から計算されることに注意してください。
例えば全回答者が1,000人、推奨者が100人、中立者が600人、批判者が300人の場合、( 100 – 300 )÷ 1000 × 100 = -20ポイントとなります。日本では中立的な立場をとろうとする人が多く、批判者の数が多くなりNPSがマイナスの値になることが一般的です。
NPSの計算方法についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
eNPSとは従業員エンゲージメントを図る指標のこと
NPSに似た言葉のeNPSとは「Employee Net Promoter Score」の略で、従業員からの自社に対する評価を表す指標です。eNSPが高ければ愛社精神が高いため、さらに貢献しようと従業員一人ひとりが懸命に働きます。個々のパフォーマンスが高まるとともにチームワークも強化されるため、企業として生産性が大きく向上するでしょう。
NPSと顧客満足度の違い
評価基準が統一されているかどうか
NPSは質問が「他の人に薦めたいか」の一意であるとともに、11段階で選択する形式であることからどの調査でも基準が統一されています。同時に、定量的に計算から求めることができる点も特徴です。一方で、顧客満足度は企業によって調査形式が様々で数値的に評価できるとも限りません。
そのため、顧客満足度は自社から見た主観的な評価となりますが、NPSは誰から見ても同じ結果であるという客観性を持った指標と言えます。NPSを使えば競合他社とも比較できるため、顧客から見て自社が優位にあるのかそうでないのかを明確に知ることが可能です。
業績向上と相関があるかどうか
NPSが高いことは、他の誰かに自社の商品やサービスを薦めたいと思う顧客が多いということです。現在、SNSの普及により、情報を手軽に発信できるほか、インフルエンサーの声を大事にするという消費者も増えています。そのため、ポジティブな口コミが広がれば、既存商品を新たに購入してくれる顧客が増える可能性が高まります。
同時に、推奨者は他の人に伝えたいほど自社に対する顧客ロイヤリティが非常に高いため、長期的な売上に貢献してもらえます。したがって、NPSは業績向上に強い相関があり、そのことも実際に調査結果で示されました。
一方で、顧客満足度はその顧客が商品やサービスに対して、期待以上の価値を感じられたかを示す指標であり、それに関わる施策が正しかったかという短期的な検証になります。また、人によって商品・サービスに対する期待値は異なり、他人に薦めることは「喜んでもらえる自信がある」という現れなので、NPSの方が業績向上に直結すると言えます。
NPS調査のポイント
回答者数を十分量用意する
全ての調査に言えることですが、NPS調査でも十分な量の回答数を用意する必要があります。少量では偏ったデータになる可能性が高く、統計的に妥当性を確かめられません。NPS調査では、400件以上の回答を用意することが望ましいとされ、そのときの誤差範囲は±5%となります。
回答者の数が増えれば増えるほど、偏りが少なくなるため誤差範囲が小さくなり、データとしての妥当性が高まります。
商品・サービス向けと自社ブランド向けの調査をどちらも行う
NPS調査には、商品・サービスを利用したすぐ後に質問するものと、タイミングを問わず自社そのものに対して質問するものの2種類が挙げられます。商品・サービスに対する調査は、その品質や販売するまでのマーケティングアプローチが適切であったか、あるいは改善すべき箇所があるかを知ることができます。
一方で、自社に対する質問ではブランディングが成功しているかどうかを調査でき、長期的な目で見て将来性があるかを確かめられます。これらの調査を併用することで、長期を見据えた商品・サービス体験の向上を図り、適切なブランディングを行うことが重要です。
推奨度合いへの理由を尋ねる質問を設ける
NPS調査の結果を生かすためには、顧客がなぜ知り合いに薦めたいのか、逆に薦めたくないのかという理由を把握し、それを伸ばしたり改善したりしなければなりません。その理由を知るためにも、NPS調査でその推奨度を選んだ理由を尋ねる質問を用意しましょう。
広告・商品特性・サービス対応など、良かった点や悪かった点に印を付けるチェックボックス形式や、自由に意見を求める自由回答形式の枠を設置します。
NPS調査を活用して、自社の強みと弱みを把握しファンの獲得・育成を図る
NPS調査を実施すれば、推奨者からどこを薦めたいのか、批判者からどこが薦めたくないのか、という自社の強み・弱みを把握することができます。また、競合他社と比較して、業界の中での自社の立ち位置を客観的に把握することも可能です。
これらを理解し、自社の強みを伸ばしたり、競合との競争優位性を高めたり、あるいは弱みを改善したりすることで、ファンの獲得や育成を図りましょう。
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