ナッシュ均衡という言葉をご存知ですか。
ナッシュ均衡は、企業や個人が競争の中にいて、利益を求める場合を想定したゲーム理論における重要な要素です。
今回は、ナッシュ均衡の概要やゲーム理論の基本要素、現実世界のどのような場面で見られるのかを解説します。
目次
ナッシュ均衡とは、非協力ゲームの全プレーヤーが自らの利益を最大化しようとして起きる均衡状態
ナッシュ均衡とは、複数の人物(プレーヤー)が自身の利益を追い求めて行動を選択した時に発生する均衡状態です。各プレーヤーは自分の利益を追い求める上で最も合理的だと思われる状態をとっているので、ナッシュ均衡の状態から選択肢を変えることはありません。
ナッシュ均衡を理解するための基本用語
ナッシュ均衡をより理解するためには、ゲーム理論に関する基本用語を知る必要があります。ゲーム理論とは、複数の利害関係者が存在する中で各々が利益を得る最適な方法を追う思考方法です。今回は簡略化のためにプレーヤーを二人に限定して解説します。
協力ゲーム:両者が協力して多くの利益を獲得する状況
ゲーム理論における協力ゲームとは、両者がコミュニケーションを取りながら、両者にとって最大の利益となるようにお互いに拘束力がある合意を得るものです。協力ゲームにおいては、どのような選択肢をとれば全体として利益が最大化できるかを考えます。
非協力ゲーム:当事者同士が自分の利益のみを求める状況
ゲーム理論における非協力ゲームとは、プレーヤー同士はお互いに選択肢をすり合わせず、各自が最大の利益を求めて選択するものです。全体での利益を重視した協力ゲームとは違って、非協力ゲームでは各プレーヤーが自分自身の利益のみを追求します。
パレート最適:両者にとっての利益が最大化される状況
パレート最適とは、非協力ゲームの中で両者にとって利益が最大で、最も理想的な選択肢を指します。つまり、パレート最適な状態から一方の利益を大きくしようとした場合、もう一方が不利益を被ることになります。
囚人のジレンマとは両者が自分の利益を求めた結果、両者にとって不利な状況が発生すること
非協力ゲームにおいては、ナッシュ均衡となる選択肢とパレート最適となる選択肢が一致しない場合があります。その有名な例として、囚人のジレンマという現象があります。囚人のジレンマとは、各プレーヤーが自分の利益を求めた結果、ベストではない結果を招いてしまう現象を指します。
囚人のジレンマは別々に取調べを受けている容疑者Aと容疑者Bの自白の有無を元に刑期が決まる状況を想定しており、条件は以下のように仮定されます。
- 容疑者Aと容疑者Bが両方とも自白をした場合、どちらも懲役5年の刑
- どちらかのみが自白した場合、自白した容疑者のみ懲役10年の刑、黙秘した方は懲役なし
- 両方黙秘した場合、どちらも懲役2年の刑
容疑者Aからすると、もしBが自白すると仮定した場合、自分も自白した方が刑期が短くなります。また、Bが自白しないと仮定した場合でも、自白することで自分は刑を受けずに済みます。
これは容疑者Bにとっても同じことが言えます。そのため、両者がコミュニケーションを取れない非協力ゲームでは容疑者Aも容疑者Bも自白することを選びます(ナッシュ均衡)。しかし、両者が協力した場合、懲役2年というより刑期が短い選択肢を選ぶことができます(パレート最適)。このナッシュ均衡とパレート最適の選択肢が異なることを囚人のジレンマと言います。
現実世界におけるナッシュ均衡の例
商品の値下げ競争や出店戦略
企業がライバル社との競争の中で、商品の値下げや新店舗の出店を行う場合、ナッシュ均衡の考え方を活用できます。例えば、自社が値下げをする場合としない場合、ライバル社が値下げをした場合としなかった場合を想定し、売上高の変化をもとに選択肢を考慮できます。また、自社が新店舗を出店する際に、ライバル店も同じように出店を考えていると想定し、地域AとBのどちらに出店すればいいかを出店後の売上をもとに考えられます。
軍備拡張競争
国家間の軍備拡張競争にもナッシュ均衡の考え方が活用できます。自国と他国が軍備拡張した場合の軍事力や他国との優位性を数値化し、軍備拡張を行うべきかどうかを考えることができます。
社会規範の成立
人や企業の活動を変化させるような法律・ルールなどの社会規範を成立させる場合も、ナッシュ均衡を活用できます。例えば、交通規制のルールを作り、二人のプレーヤーが高速道路と一般道のどちらを通るかによって移動にかかる時間が変わると仮定できます。この移動時間や移動にかかる料金を考慮することで、車を利用する人のルール施行後の行動を予測できます。
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