スキルトランスファーとは｜メリットや5つの方法、行う際のポイントを紹介

「スキルトランスファー」という言葉をご存知ですか？これは、蓄積したノウハウを他の社員に引き継ぐことで、組織の成長に必要なものです。
今回は、スキルトランスファーの概要やメリット、5つの方法、実施のポイントを紹介します。

スキルトランスファーとは、蓄積した技術や知識を他の社員に引き継ぐこと

スキルトランスファーとは、ある社員が持っている技術や知識を、他の社員に引き継ぐことを指します。組織の中で知識が共有され、継承されることで、組織全体の能力が向上し、成長につながります。

スキルトランスファーとよく似た言葉にナレッジトランスファーがありますが、スキル（技術）とナレッジ（知識）は密接に関わっているため同じ意味で用いられることが多いです。ただし、スキルトランスファーは、ただの引き継ぎではなく、仕事に対する心構えや感覚といった抽象的な事柄まで引き継ぐという点では異なります。

スキルトランスファーのメリット

社員の成長促進につながる

スキルトランスファーによって、社員の成長を促すというメリットがあります。スキルトランスファーにより、社員が持つスキルや知識が共有されると、他の社員が新しいことを学び、スキルアップする機会が増えます。これにより、組織全体の技術力が向上し、業務の効率化や品質の向上につながります。

特に経験の浅い社員にとっては、ベテラン社員の持つノウハウを適切に引き継ぐことで、成長のスピードを速められます。

社内にノウハウが蓄積される

スキルトランスファーにより、組織全体で持っているノウハウが蓄積され、組織の知的資産として活用できるようになるというメリットがあります。社員の退職や異動などによる人材流出に対しても、組織が持っているノウハウを失うことが少なくなるほか、業務の属人化が防げます。

顧客との信頼関係が保てる

スキルトランスファーにより、顧客へのサービス提供に必要なスキルや知識を組織全体で共有することで、顧客との信頼関係が築けるという点もメリットの一つです。スキルトランスファーにより適切な引き継ぎが行われていると、担当者が変更になった場合でもサービスの質を落とすことなく顧客対応ができるため、信頼関係が保てます。

また、顧客の問題解決にスムーズに対応できるようになることで、顧客満足度が向上し、組織の信頼度向上にもつながります。

スキルトランスファーの5つの方法

連続移転

連続移転とは、ある業務から得た知識やノウハウを同じ組織・業務で活用できるようにする移転方法を指します。

具体的には、経験の浅い新社員が経験豊富な社員からスキルを習得する際などに用いられます。新人社員は、経験豊富な社員から業務に必要な内容や注意点を引き継いだり、トレーニングを受けたりしながら、業務の流れやスキルを身につけることができます。連続移転を行う際には、定期的なミーティングを実施し情報共有できる場を作ることが大切です。

近接移転

近接移転とは、組織やチーム内で得た知識やノウハウを別の業務やチームなどで活用できるようにする移転方法のことです。

例えば、営業チームで活用している業務効率化に関するツールを、別の部署であるマーケティングチームでも活用する際などに用いられます。ただし、移転先と移転後の業務が類似していることが前提条件になります。

近接移転を行う際には、情報共有ツールを使い知識やノウハウを伝達することでスムーズに移転が進められます。

専門知移転

専門知移転とは、活用頻度の低い専門的な知識・ノウハウを組織内や個人間で移転させる移転方法のことです。

専門知移転は、専門性が高く修得の難易度が高いため、勉強会の開催や質疑応答、議論の場を設けるなどして理解を深める必要があります。

遠隔移転

遠隔移転は、マニュアル化することが難しい非定型業務のノウハウを別の部署や他の社員でも活かせるようにする移転方法です。

遠隔移転と近接移転は同じ性質を持つ移転方法ですが、遠隔移転は移転する知識・ノウハウが暗黙知であることと、非定型業務であるという特徴があります。

また、遠隔移転は言語化しにくい内容を共有する必要があるため、メールや情報共有ツールではなく、ミーティングを行い対面で話し合える場を設けることが大切です。

戦略移転

戦略移転は、専門知移転よりもさらに活用頻度が低い非定型業務の技術やノウハウを移転する方法です。代表的な戦略移転にはM&Aに関するノウハウなどがあります。

発生頻度が低く、使用機会が限定されるため、移転の優先順位は低くなりますが、貴重なノウハウであることが多いため、継承する重要度は高いと言えます。

スキルトランスファーを行う際のポイント

社内で方針を共有し、移転しやすい環境を整備する

スキルトランスファーを実施する前に、社内で方針を共有することが重要です。移転の目的や必要性、スキルトランスファーの方法や期間などを明確にし、社員全員が理解できるようにすることで、円滑な移転が行えます。

移転対象となる担当者とスキルの範囲を決める

移転対象となる担当者を適切に決めることも、スキルトランスファーの成功には不可欠です。移転対象者には、スキル習得に向けた意欲があり、熱心に取り組める人材を選ぶことが大切です。

また、スキルトランスファーの範囲も明確にする必要があります。どのようなスキルをどの程度習得するかを決め、目標を明確にすることで、計画的かつ効率的なスキルトランスファーが実現できます。

担当者の時間・心理的負担を軽減する

スキルトランスファーには、移転対象者が新しいスキルを習得するために、多大な時間や労力が必要です。新しい環境に適応するためのストレスや不安など、心理的な負担も大きくなるため、移転しやすい環境を整備することが大切です。必要な設備や情報、ツールを整備し、職場環境を整えることで、ストレスや負担を軽減しましょう。