市場変化のスピードが加速している現代では、イノベーションの創出が求められています。しかし、具体的なイノベーションとは何か、明確にイメージできる方は少ないのではないでしょうか。
今回は、イノベーションの意味や種類、求められている理由、代表的な事例をあわせて紹介します。
目次
イノベーションとは、社会的に変革をもたらす新たな価値やアイデアを創出すること
イノベーション(Innovation)とは、革新的な技術や発想によって、社会的に変革をもたらすような新たな価値やアイデアを創出することです。オーストリア出身の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが、自身の著書『経済発展の理論』の中で定義しました。日本語では「技術革新」と訳されますが、技術だけが対象ではなく、新しい仕組みや価値観、考え方も含みます。
リノベーションとの違い
リノベーション(Renovation)とは、「刷新」「改善」「修復」などと訳されます。既存の構造を保ちつつ、用途や機能を刷新して価値を向上させる行為を指します。日本では一般的に建築物の改造を指す言葉として用いられます。
イノベーションは新しいアイデアや手法の創出によって構造そのものを変える一方、リノベーションは既存のものを改良し進化させるが、構造そのものを変えるような大きな変革をもたらすわけではないという点で異なります。
イノベーションの種類
ヨーゼフ・シュンペーターの5種類のイノベーション
ヨーゼフ・シュンペーターは著書の中で、5種類のイノベーションが存在すると示しました。
- プロダクトイノベーション
新製品やサービスの開発によって、既存の市場に新たな価値をもたらすことです。 - プロセスイノベーション
既存のプロセスの改善や効率化によって、生産性向上を図ることです。 - マーケットイノベーション
新しい市場の発見や開拓によって、既存の製品やサービスを新たな顧客層に提供することです。 - サプライチェーンイノベーション
新たな資源の確保や仕入れ先の獲得、流通ルートの改善などにより、生産力や価格競争力を向上させることです。 - オーガニゼーションイノベーション
組織内の構造や文化の変革によって柔軟性や創造性の向上を図ることです。
クレイトン・クリステンセンの2種類のイノベーション
経営学者のクレイトン・クリステンセンは、著書『イノベーションのジレンマ』の中で、イノベーションを2つに分類しました。
- 破壊的イノベーション
業界や市場の慣習を打ち破り、大きな変革をもたらすイノベーションのことです。従来にはない製品やサービスを生み出し、既存の業界や市場構造に重大な変化をもたらす可能性があります。 - 持続的イノベーション
市場で競争優位性を維持するためのイノベーションのことです。スマートフォンアプリのアップデートなど、性能の向上や改善などが行われます。顧客や市場の声に依存しすぎると、破壊的イノベーションに取って代わられ、イノベーションのジレンマが生じる可能性があります。
「イノベーションのジレンマ」とは、市場での優位性の維持を目指して持続的イノベーションに焦点を当てすぎた中、破壊的イノベーションに成功した企業に市場を奪われる状態を指します。
イノベーションのジレンマの詳細は以下の記事をご参照ください。
ヘンリー・チェスブロウの2種類のイノベーション
経営学者のヘンリー・チェスブロウは、著書『
2つのイノベーションを定義づけました。- クローズドイノベーション
情報や技術の共有、研究開発など、イノベーションを自社だけで行うことです。 - オープンイノベーション
企業内外のパートナーシップや外部のアイデアを活用するイノベーションのことです。情報や技術の共有、協力関係の構築を重視します。
イノベーションが求められている理由
労働人口が減少しているため
現在日本では、少子高齢化に伴い労働人口の減少が懸念されており、既に人手不足が顕在化しています。そのため、企業はビジネスモデルや制度を変え、イノベーションを取り入れることで、労働力不足への対応が求められています。
また、イノベーションによる改革を行い、生産性を向上させて、最小限の人数で効果的な業績を達成することも求められます。
技術革新により市場変化のスピードが加速しているため
現在、IT技術などの急速な技術革新により、時代や市場が目まぐるしく変化しています。このため、現在獲得している市場シェアが大きい場合でも、競合他社によってシェアを奪われる危険性が絶えず存在します。
そのため、企業はイノベーションを通じて新しい価値を提供し、顧客を継続的に引き付ける必要があります。これにより、時代の変化に適応し、競争に巻き込まれても事業を継続できる可能性が広がります。
イノベーションの事例
メルカリ
(メルカリ公式サイト:https://jp.mercari.com/)
メルカリは「中古品EC」という新しい市場を生み出し、本来捨てられるはずだったモノに経済的価値を与え、産業の構造を変革しました。参入障壁が高くないビジネスモデルでありながらも、先行者利益を生かして国内シェアを維持しています。利便性の高い発送方法や積極的な集客施策(テレビCMなど)により、アクティブユーザーを確保しています。
また、社員同士のオープンなコミュニケーションを奨励し、社員が積極的にアイデアを提案できる環境作りを構築しています。さらに、社内情報の透明性を保つことを重視するとともに、提案されたアイデアを素早く実行する柔軟な体制づくりにも注力しています。
富士フイルム
(富士フイルム公式サイト:https://www.fujifilm.com/jp/ja)
富士フイルムは写真フィルム市場の縮小を予測し、化粧品や医療機器などの異なる分野に進出しイノベーションを起こしました。急激なビジネス環境の変化に対応するために社内改革を実施し、フィルム製造で培った技術を活かして、医療や半導体事業を展開し大きな成果を上げています。
また、2014年には共創の拠点として「Open Innovation Hub」を設立し、企業外のビジネスパートナーと連携しています。その結果、富士フイルムの技術と外部のニーズを結びつけ、社会的な課題に対する新しいイノベーションの創出に成功しました。
P&G
(P&G公式サイト:https://jp.pg.com/)
P&Gのジェルボール型洗剤は、計量作業の手間だけでなく、洗剤を詰め替える際のこぼれやすさにも着目して開発されたものでイノベーションを起こしました。この革新的な商品は、3年で1億個以上の販売を達成し、家事のストレスを軽減しました。 P&Gはこれまでに多くのイノベーションを生み出しており、ジェルボール型洗剤はその中でも画期的な製品となっています。
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