この記事は 4 分で読めます

「1:5の法則」とは?新規獲得と既存顧客維持のバランスを考える

URLをコピーする

営業戦略を立てる上で重要な要素となる「1:5の法則」をご存じですか?
新規顧客の獲得も既存顧客の維持も重要ではありますが、実は新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍のコストがかかってしまうのです。

今回は、そんな「1:5の法則」の基本的な考え方と、実際に新規顧客獲得と既存顧客維持のバランスをどのように考えていくかを紹介していきます。

「1:5の法則」は、新規顧客への販売コストは既存顧客の5倍かかるという法則

「1:5の法則」とは、新規顧客に製品やサービスを販売するには、既存顧客に販売する場合と比べて5倍のコストがかかるという法則で、アメリカのフレデリック・F. ライクヘルドによって提唱されました。

新規顧客の獲得には、テレアポ・飛び込みなどの営業、展示会やセミナーの開催、宣伝広告などの初期投資が必要であり、これには高額なコストが伴います。

一方、既存顧客はすでに製品やサービスの品質を認識していて信頼関係もあるため、既存顧客を維持するコストは新規顧客の獲得に比べてはるかに低く抑えられます。

「5:25の法則」

「1:5の法則」に関連するものに「5:25の法則」があります。これは、顧客離脱率を5%改善することで、少なくとも利益を25%向上させることができるという経験則です。

この2つの法則をふまえると、新規顧客の獲得よりも既存顧客の維持に注力する方が、効率的に利益を上げられることになります。

とはいえ、既存顧客の維持だけでは事業の拡大をしていくことは難しいでしょう。効率的な利益率の向上と事業の拡大、つまり既存顧客と新規顧客のバランスを考えることが重要です。

純顧客価値(顧客知覚価値)

1:5の法則を考える上で、フィリップ・コトラーが提唱する「純顧客価値」についても知っておくと良いでしょう。「顧客知覚価値」とも呼ばれ、顧客が製品やサービスから受け取る利益である「顧客価値」と、それを得るために支払うコストである「顧客コスト」の差(顧客価値−顧客コスト)として定義されます。

例えば、2つの製品で購入を悩んでいる場合、顧客は純顧客価値がより高いと感じる方を購入するでしょう。そして、1度でもその製品を購入したことがある既存顧客の場合、顧客コストが低くなるため、純顧客価値は高くなると考えることができます。


【顧客価値】

  • 製品価値:製品自体の機能性、品質、性能など、製品の直接的な価値
  • サービス価値:顧客サポート、保証、メンテナンスなど、製品に付随するサービスによる価値
  • 従業員価値:従業員の対応やパーソナリティなどによる価値
  • イメージ価値:企業やブランドのイメージなどによる価値

【顧客コスト】

  • 金銭的コスト:製品そのものの価格や維持費、関連する追加費用など
  • 時間的コスト:納品や交渉にかかる時間、使用法を理解するのに必要な時間など
  • エネルギーコスト:製品を探すのにかかる手間や購入時の手続き、持ち帰りにかかる労力など
  • 心理的コスト:初回購入の際の不安やリスク、大金を支払う場合のストレスなど

既存顧客を維持するためのポイント

既存顧客は新規顧客に比べて商品を再購入する可能性が高いだけでなく、口コミなどを通じて、新規顧客の獲得に間接的に貢献することもあります。既存顧客を維持することは、安定した収益基盤を築く上で非常に重要です。

パーソナライズされたマーケティングを行う

過去の購買履歴や好みに基づいて、顧客ごとにパーソナライズされた情報を提供しましょう。例えば、一人ひとりに合わせたメールマーケティングで、顧客の興味やニーズに応じた情報を届けたりすることが有効です。顧客の満足度を高め、製品やブランドへの愛着を持ってもらえるよう働きかけましょう。

定期的に接点を持つ

ニュースレターや会員専用のイベントなどを通じて、定期的に顧客との接点を持つことも効果的といえます。これにより、顧客との関係を継続的に強化し、顧客離れを防ぐことにつながります。

また、リピーターへのロイヤルティプログラムや紹介への報酬システムを通じて、リピート購入や周囲への紹介を促しましょう。ポイント制度や会員特典などを用意することも効果的です。

カスタマーサポートを強化して顧客の声を活用する

顧客が抱える疑問や問題には迅速に対応することで、信頼関係を築くことができます。カスタマーサポートを充実させることで、顧客満足度を高めましょう。

また、顧客からのフィードバックを積極的に集め、それを製品やサービスの開発、改善に活かすことも効果的です。顧客の声を製品開発に反映させることで、顧客の製品やブランドに対する愛着を深め、さらなる信頼関係を生み出すことができます。

既存顧客維持と新規顧客獲得のバランスの考え方

ここまで既存顧客の維持について解説しましたが、一方で新規顧客の獲得も、市場のシェアを拡大し、企業が成長していくためには欠かせません。

新規顧客も、一度獲得につなげれば既存顧客となります。新しい顧客層を開拓することで、将来の安定した利益につなげていきましょう。

既存顧客と新規顧客、どちらにより注力すべきかは、状況によって異なりますので、自社にあった戦略を考えましょう。

市場の成長性と自社の立ち位置の関係性から考える

市場の成長率と、自社の市場内シェアから、新規顧客の獲得と既存顧客維持のバランスを考えることができます

例えば、市場が成熟しきっていて成長率が低く、かつ自社が大きなシェアを持っている場合、可能な限りコストを抑えながら大きな利益を生むことが求められます。こうした場合には、コストの低い既存顧客の維持に重点をおくことが最適といえるでしょう。

一方、市場が成長段階にあり、これからの成長率が高い事業に関しては、積極的に市場内のシェアを獲得しつつ、市場そのものの規模を拡大していく必要があります。こういった事業で営業を行う場合は、多少大きなコストがかかったとしても、新規顧客の獲得に重点をおくことが望ましいといえるでしょう。

企業ライフサイクルの中での自社のフェーズを考える

企業のライフサイクルからも、新規顧客獲得と既存顧客維持のバランスを考えることができます。企業ライフサイクルとは、設立から成長、そして衰退までの流れを時間と利益で表したものです。

lifecycle多くの企業は、導入期から成長期を経て利益を伸ばします。そして成熟期には安定して大きな利益を生み、いずれ衰退していきます。このうち、導入期および成長期にある企業は新規獲得に大きく力を入れるべきだといえます。まずはとにかく多くの顧客を獲得し、企業として成長していく必要があります。

一方で、成熟期にある企業は既存顧客の維持に労力を割くべきといえます。この時期の企業は強いブランド力と差別化要素を持っており、効率よく利益を上げていくことが求められています。そのため、営業も低コストでしっかりと利益を上げることが必要です。

また、成熟期にある企業はいずれ衰退期に突入していきます。その際に新たな成長事業に投資できるように、この時期には既存顧客維持による確実な利益を優先しておくべきだといえるでしょう。
 
 
最後に、新規顧客獲得の際には、ぜひ弊社が提供する営業リスト作成ツール「Musubu」もご活用ください。
業界や企業規模、設立年月から現在求人を出している企業まで、細かなセグメントでのリスト作成が可能です。
⇒ 営業リスト作成ツール「Musubu」の詳細をみる

 

監修

Baseconnect株式会社 マーケティングチーム マネージャー

河村 和紀(かわむら かずき)

大手人材紹介会社に新卒入社。その後、Webメディア「ferret」を運営する株式会社ベーシックに入社。営業、営業企画、イベントマーケを経て、マーケティングマネージャーに就任。
2022年、Baseconnect株式会社に参画。イベントを中心とした、ユーザーとのコミュニケーション領域を管轄する。

主な寄稿実績『マーケター1年目の教科書』、『MarkeZine(マーケジン) vol.66

 

マーケティングおすすめの記事

2020年7月22日

【マーケティングに必須】市場分析とは?フレームワークも併せて紹介

2020年4月28日

製品戦略(プロダクト戦略)とは?具体的なフレームワークも紹介

2018年8月1日

無料のマーケティングオートメーション(MA)ツール4選!簡単に使いこなそう