この記事は 5 分で読めます

普及率アップの鍵となるクリティカルマスとは?キャズム理論との違いを解説

URLをコピーする

近年、マーケティングの世界で注目を集めている「クリティカルマス」は、イノベーションを起こし新商品を普及させるために、非常に重要なものです。

今回はクリティカルマスについて、キャズム理論との違いやイノベーションを成功に導くポイントなどを合わせて解説していきます!

クリティカルマスとは、商品の普及率が上がる分岐点のこと

クリティカルマスとは、ある商品やサービスの普及率が急激に跳ね上がるようになる分岐点を指します。新しい商品やサービスが市場に投入されたとき、一般的にはまず一部の先進的な消費者に受け入れられ、徐々により保守的な層へと浸透していきます。このプロセスにおいて普及率がクリティカルマスに達した時、飛躍的に普及が加速するといわれています。

一般的にクリティカルマスは、全体のうちの16%の消費者に普及した点とされています。例えば、かつて革新的な製品として登場した電話、テレビ、冷蔵庫、パソコンなどは、いずれも普及率が16%を超えたあたりから急激に普及が進んだことが知られています。また、近年ではスマートフォンの普及にも同様の傾向が見られました。

クリティカルマスの前提となる消費者の分類

クリティカルマスについて理解を深めるためには、イノベーションの普及プロセスにおける消費者の分類について知っておく必要があります。
エベレット・ロジャースはイノベーター理論の中で、新商品に対する反応の違いから消費者を5つのカテゴリに分類しています。

初期市場

  • イノベーター(Innovators)

イノベーターは、新しいアイデアや商品を積極的に取り入れる傾向を持つ人々で、市場のおよそ2.5%を占めるとされます。未知のものへの抵抗が少なく、リスクを恐れずに新商品を試してみようとする層です。

  • アーリーアダプター(Early Adopters)

アーリーアダプターは、イノベーターほど積極的ではないものの、新商品に関する情報に敏感な消費者で、市場の13.5%程度を占めます。自ら情報を収集し、良いと判断した商品は積極的に受け入れます。また、口コミでの発信力も高く、新商品の評判を広める上で重要な役割を果たします。

イノベーターとアーリーアダプター、2つの消費者層を合わせたものは「初期市場」と呼ばれ、クリティカルマスに到達するための鍵を握っています。商品やサービスが初期市場で支持を得ることが、その後の大多数の消費者への普及を左右する大きなポイントとなるのです。

メインストリーム市場

  • アーリーマジョリティ(Early Majority)

アーリーマジョリティは市場の34%を占める層で、新商品の様子見の後、比較的早い段階で採用する人々です。慎重ではあるものの、世の中の変化を敏感に捉え、新しいものを受け入れる土台を持っています。

  • レイトマジョリティ(Late Majority)

レイトマジョリティも34%を占める層ですが、アーリーマジョリティよりもさらに慎重で、半数以上の人々が使っていることを確認してから新商品を採用する傾向にあります。

  • ラガード(Laggards)

ラガードは16%程度を占める最も保守的な層で、伝統的な価値観を重んじ、なかなか新しいものを受け入れようとしません。商品が「あって当たり前の物」とされるまで普及しないと、導入は期待できないでしょう。

アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードを合わせた消費者市場を、メインストリーム市場と呼びます。

キャズム理論との違い

イノベーションの普及を説明する理論としては、クリティカルマス以外にも、キャズム理論というものが存在します。

クリティカルマスでは、革新的な商品が初期市場(イノベーターとアーリーアダプター)で一定の支持を得られれば、その後は自然とアーリーマジョリティ、レイトマジョリティへと普及が進むと考えられています。

しかしキャズム理論では、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には大きな溝(キャズム)が存在し、その溝を乗り越えられなければ、商品は広く普及することができないと指摘しています。

16%の意味合いが異なる

クリティカルマスとキャズム理論では、普及率16%という数字の意味合いも異なってきます。

クリティカルマスの考え方では、イノベーターとアーリーアダプターをあわせた初期市場(16%)まで商品が普及したら、その後も自ずと他の消費者に普及するということになります。

一方、キャズム理論では、新しい物に敏感なアーリーアダプターから、商品への安心感を求めるアーリーマジョリティへの普及が最も難しく、16%を超えられないとイノベーションは失敗するとしました。つまり、初期市場への普及だけでは不十分で、アーリーマジョリティの期待に応える商品開発や販売戦略が不可欠だということになります。

クリティカルマスに到達するための施策例

無料トライアルやサンプル配布による体験の提供

新商品に対する不安や抵抗感を軽減するために、無料トライアルやサンプル配布を行うことは非常に有効です。実際に商品を手に取って使用感を確かめられる機会を提供することで、イノベーターやアーリーアダプターの興味を引き、購入へのハードルを下げることができます。

さらに、体験を通じて得られたフィードバックを商品の改善に活かすことも可能です。

SNSや口コミを活用した情報の拡散

イノベーターやアーリーアダプターは新しい情報に敏感で、SNSやブログなどのデジタルメディアを活発に利用する傾向があります。これらのチャネルを通じて商品情報を積極的に発信し、口コミを促進することが重要です。

特に、専門家やインフルエンサーによって発信された情報は、初期市場での信頼と興味を獲得する上で大きな効果を発揮します。

イノベーターやアーリーアダプターに向けたプロモーション

新商品に関心を持つ人々が集まるイベントや、特定の趣味・関心に基づくコミュニティは、イノベーターやアーリーアダプターにアピールするための重要な場となります。こうした場で商品の魅力を直接伝えることで、初期市場での認知と評価を高めることができます。

また、イベントやコミュニティを通じて得られる生の声は、商品開発やマーケティング戦略に非常に役立ちます。

インフルエンサーとのタイアップやPR

初期市場での商品の信頼性と魅力を高めるために、影響力のあるインフルエンサーとのタイアップやPRは効果的な施策と言えます。

特に、アーリーアダプターの間で強い影響力を持つインフルエンサーからの発信は、新商品への関心と信頼を大きく高める可能性があります。インフルエンサーとのコラボレーションを通じて、説得力をもって商品の魅力を伝えていくことができるでしょう。

革新性や独自性を訴求するブランディング

イノベーターやアーリーアダプターは、新しいものや革新的なものに強く惹かれる傾向があります。したがって、商品の革新性や独自性を明確に訴求するメッセージの発信やブランディングは非常に重要です。

商品の差別化ポイントや、ユーザーにもたらす独自の価値を、印象的かつ説得力のある形で伝えていくことが効果的でしょう。

イノベーションを成功に導くためのポイント

クリティカルマスの概念は、イノベーションの普及プロセスの一つの側面を捉えたものです。実際にイノベーションを成功に導くためには、他にも多くの要素を考慮する必要があります。

継続的な商品・サービスの改善を目指す

イノベーションの成功において、商品やサービスの価値を継続的に高めるための改善は欠かせません。初期の成功に満足することなく、常にユーザーにとっての価値を提供し続けることが重要です。そのためには、ユーザーの声に耳を傾け、ニーズや課題を深く理解することが求められます。

ユーザーの行動や要望を詳細に分析し、商品やサービスの改善にフィードバックしていくことで、イノベーションの価値を持続的に高めていきましょう。

ユーザーとの強い絆を築く

長期的な成功を収めるためには、ユーザーとの強い絆を築くことが不可欠です。商品やサービスの機能的な価値だけでなく、ユーザーとの継続的な対話を通じて共感や信頼を生み出し、ブランドへの愛着を育んでいくことが重要です。

また、ブランドの価値観やビジョンを明確に打ち出し、ユーザーと共有することで、イノベーションに対する理解と支持を得ることができるでしょう。

市場の変化へ適応する

市場のトレンドやユーザーの嗜好の変化、新たなテクノロジーの登場など、イノベーションを取り巻く環境は常に変化しています。その変化に適応して、新たな機会を捉えていくことが重要です。固定観念にとらわれることなく、新しい視点や発想を取り入れて市場の変化に対応していくことが、長期的な成功につながるのです。

また、テクノロジーの進歩を積極的に活用し、イノベーションの可能性を広げていくことも重要です。

 

最後に、新規顧客獲得の際には、ぜひ弊社が提供する営業リスト作成ツール「Musubu」もご活用ください。
業界や企業規模、設立年月から現在求人を出している企業まで、細かなセグメントでのリスト作成が可能です。
⇒ 営業リスト作成ツール「Musubu」の詳細をみる

 

 

監修

Baseconnect株式会社 マーケティングチーム マネージャー

河村 和紀(かわむら かずき)

大手人材紹介会社に新卒入社。その後、Webメディア「ferret」を運営する株式会社ベーシックに入社。営業、営業企画、イベントマーケを経て、マーケティングマネージャーに就任。
2022年、Baseconnect株式会社に参画。イベントを中心とした、ユーザーとのコミュニケーション領域を管轄する。

主な寄稿実績『マーケター1年目の教科書』、『MarkeZine(マーケジン) vol.66

 

マーケティングおすすめの記事

2020年7月22日

【マーケティングに必須】市場分析とは?フレームワークも併せて紹介

2020年4月28日

製品戦略(プロダクト戦略)とは?具体的なフレームワークも紹介

2018年8月1日

無料のマーケティングオートメーション(MA)ツール4選!簡単に使いこなそう