この記事は 4 分で読めます
財務諸表の読み取り方|財務三表の基本と分析方法を解説
財務諸表に関する知識は、企業経営の基礎です。そのため、財務諸表が読めることが昇進の条件になることも多くあります。
今回は、財務諸表について、特に重要な財務三表を中心に、それぞれの役割や読み取り方を解説します。
財務諸表とは、企業活動を数字に落とし込んだ表のこと
財務諸表とは、企業のある時点での財政状態や、ある一定期間のお金の動きを表にしたものです。
財務諸表には大きく分けて2つの役割があります。1つは、経営者が企業の経営状態を定量的に把握し、短期〜中長期の戦略の立案・修正や実行の助けとなる役割です。
そしてもう1つ重要な役割に、出資者や銀行などに対して企業財務の状況を明らかにし、投資や融資の判断を促すというものがあります。特に上場企業などは、法律上財務諸表の公開を義務付けられています。
企業を分析するには「財務三表」が重要
企業会計の統一ルールでは、以下の4つが財務諸表として扱われています。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書(C/F)
- 株主資本等変動計算書(S/S)
この中でも特に「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」は企業財務の状態を知るのに重要です。この3つの財務諸表をまとめて「財務三表」と呼びます。
財務三表とその読み取り方の基本
貸借対照表(B/S)
貸借対照表とは、ある時点での企業の資産の状態をまとめた計算書類です。英語でbalance sheetと呼ばれることから、B/Sと表記することもあります。
貸借対照表は、「資産」「負債」「純資産」の3つの項目で構成されます。
▼資産
資産とは、企業が事業を行なうために所有している資産全体のことを指します。企業は銀行からの融資や株式の発行、利益の蓄積などによって資金を調達し、事業を行ないます。貸借対照表上での「資産」は、調達の手段や返済の有無を問わず、企業の保有する財産すべてを指します。
また、1年以内に現金化できる、あるいは通常の営業活動の中で売上として現金化できるものを「流動資産」といいます。反対に、通常の営業活動の中で売上として現金化しないものや、1年以内に現金化できないものを「固定資産」といいます。
加えて、資産と負債、純資産の間には以下の関係が成り立ちます。
資産 = 負債 + 純資産
▼負債
負債とは、銀行借入や社債発行などを通じて他人から調達した、返済の必要がある資産を指します。1年以内に返済・償還の期限が来るものを「流動負債」、返済・償還の期限が1年以上先のものを「固定負債」と呼びます。
負債が過剰な場合、企業の安定性が損なわれることがあります。
注意すべき点として、株式によって調達した資金は返済の必要がないため、負債には入りません。
▼純資産
純資産とは、経営者が起業の際に払い込んだ現金や株主からの出資金、利益の内部留保分など、返済の必要がない資産のことをいいます。負債に対して純資産が厚い企業は、安全な経営を行なっているといえます。
損益計算書(P/L)
損益計算書とは、一定期間の企業の努力(費用)と成果(収益)の関係性を落とし込んだ計算書類です。英語ではprofit and loss statementと呼ばれるため、P/Lと表記されることもあります。貸借対照表が資産のストックを示している一方、損益計算書はフローを示しています。
損益計算書の重要項目には、「売上高」「売上高総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」の5つがあります。
▼売上高
売上高とは、企業の本業によって生じた収入のことを指しています。製造・販売に必要なコストは考慮しておらず、例えば50万円の商品を2,000個売れば、単純に売上高は10億円となります。
▼売上高総利益
売上高総利益とは、売上高から売上原価(商品の原価)を差し引いたもので、粗利とも呼ばれます。例えば、50万円の商品を2,000個売った時、商品の原価が10万円であれば、売上高総利益は8億円です。
▼営業利益
営業利益とは、売上高総利益から販売費および一般管理費(販管費)を差し引いたもので、本業の利益を示しています。なお、販管費とは販売に必要なマーケティング費用や人件費、接待費用などのことです。
例えば、原価10万・販売価格50万円の商品を2000個売った時、販管費が6億円かかれば営業利益は2億円です。
▼経常利益
経常利益とは、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いたものです。営業外収益(費用)とは、本業以外で継続的に発生している収益(費用)のことで、主に財務活動によるものを指します。
例えば利子収入(利払い費)が営業外収益(費用)にあたります。また、営業外収益から営業外費用を差し引いたものを営業外損益といいます。
具体例として、営業利益が2億円の企業で、営業外損益が▲5,000万円の場合、経常利益は1億5,000万円です。
▼当期純利益
当期純利益とは、当期純利益に特別収益を足し、特別損失を引いた「税引前当期純利益」から、法人税等を差し引いたものです。
特別収益(損失)とは、営業活動以外で臨時的に発生した収益(損失)のことを指します。例えば、固定資産の売却益(損)や、災害などでの損失がこれにあたります。
また、法人税等には法人税の他、法人住民税、法人事業税が含まれます。
具体例として、経常利益1億5,000万円の企業が、火災による倉庫の焼損で▲5,000万円の特別損失を計上したとします。この場合、税引前当期純利益は1億円となり、さらに法人税3700万円が課税されたとき、当期純利益は6300万円となります。
キャッシュフロー計算書(C/F)
キャッシュフロー計算書とは、ある一定期間の企業の活動によって生じた現金の動きと残高を示したものです。企業は手元の現金が尽きればP/L上黒字でも倒産してしまいますので、非常に重要な計算書類です。
キャッシュフロー計算書には以下の3項目があります。
▼営業活動によるキャッシュフロー
本業の活動によってどのように現金が動き、どの程度の残高があるのかを示したのが「営業活動によるキャッシュフロー」です。この項目が増加していれば、事業が堅調だと考えられます。
▼投資活動によるキャッシュフロー
生産設備等への投資によってどのように現金が動いたかを示したのが「投資活動によるキャッシュフロー」です。これが減少している場合、生産設備等に投資をしており、事業拡大をめざしていると考えられます。反対に増加している場合、固定資産を積極的に売却している可能性があります。
▼財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローは、資金調達などの財務活動を通じてどのように現金が動いたのかを示しています。
これが増加している場合、事業拡大のために大口の融資や投資を受けている可能性があります。反対に減少している場合、財務の健全性を向上させようとしていることがあります。
いかがでしたか?
財務諸表を読める力はビジネスの基礎体力です。この記事を参考に、財務諸表について知識を深めてみてください。
まずはこれだけ。新規開拓営業を始める時の心得
無料でダウンロードするために
以下のフォーム項目にご入力くださいませ。