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インサイトを見抜いてマーケティングに生かすには?事例も併せて紹介
消費者インサイトは、モノがあふれ品質や性能だけで勝負することが難しくなってきた昨今の消費社会において非常に注目されているマーケティング用語です。
今回はインサイトを得るためのステップと実際の事例をあわせてご紹介します。
目次
インサイトとは消費者本人も気付いていない購買動機のこと
消費者インサイトとは、消費者自身も気づいていない、購買欲求につながる動機のことを言います。
よく混同されがちな潜在ニーズは、消費者の「~したい」という欲求が存在しているが、まだ気付かれていない状態を指します。
インサイトは潜在ニーズと違い、消費者の「~したい」という欲求自体がまだ存在していない状態なのです。
インサイトを見抜くことで、ニーズを「見つけて」いくのではなく、ニーズを「作り出して」いくことが可能になり、新たな市場の確保に繋がります。
消費者インサイトを得るための3つのステップ
1.「ペルソナ設定」や「共感マップ」を用いて、インサイトに関する仮説を立てる
消費者インサイトを探るには、仮説を立てることが重要です。
仮説を立てると、その仮説の立証に必要な情報を定められ、実際に調査を行うことで検証が可能になります。この「仮説を立てる→調査→検証→新たな仮説を立てる」というサイクルを繰り返すことで、より確実にインサイトを見抜くことができるのです。
そして、仮説を立てるためには、自社商品を購入する消費者の立場に立って考えることが必要です。そのために、「ペルソナ設定」や「共感マップ」などの手法を活用しましょう。
まず、「ペルソナ設定」とは、その人格が実際に存在すると仮定して性別から年齢、家族構成や性格など、細かいプロフィールを設定していく方法を言います。ペルソナとは、消費者の典型的な人格モデルのことです。
インサイトの仮説を立てる場合は、自社製品やサービスを利用する層の中で最も典型的なペルソナの設定をしましょう。
ペルソナ設定については詳しくは下の記事を参照してください。
ペルソナを設定したら、次はそのペルソナの「共感マップ」を考えていきます。
共感マップは、ペルソナを取り巻く環境や願望や行動などを想像し、普段何を見て何を考えているのかを書き出していくものです。
これを共有することで、メンバー間でペルソナに対するイメージをより具体的にし、統一することができます。
こうして消費者の具体的な像を作りその思考を探ることで、その中にどんな消費者インサイトが隠れているのか考え、具体的な仮説を立てていきましょう。
2.アンケートやグループインタビューを活用してデータを集め分析する
仮設を立てたら、次はそれを検証するための調査を行っていきます。
調査には、数値ではかる「定量調査」と質的にはかる「定性調査」があり、それぞれ次のような方法が挙げられます。
●定量調査
ネットリサーチ:インターネット上で行うアンケート調査方法
電話調査:電話で行うアンケート調査方法
郵送調査:郵送でアンケートを送り記入してもらう調査方法
街頭調査:街頭にて口頭でアンケートに答えてもらう調査方法
●定性調査
グループインタビュー:座談会形式で司会者が質問していく調査方法
インデプスインタビュー:1対1で質問していく調査方法
店頭調査:調査員が店頭で顧客の行動を観察する調査方法
行動観察調査:調査員が実際の生活現場に出向いて観察する調査方法
SNS調査:SNSの投稿を観察する方法
この時用いる質問や形式は、仮説に沿って考えるように注意しましょう。
アンケートで定量データを集めながら、同時にインタビューなどを利用して消費者の本音を聞き出すことで、より精確な情報を集められます。
3.データを活用して分析を行い、インサイトを考察する
得たデータを基に、仮設の検証を行いつつ分析を進めていきます。
定量調査で得たデータと、定性調査で得たデータでは分析方法が変わってくるため、詳しくは以下の記事を参考にしてみて下さい。
調査をもとに、改めてペルソナ設定や共感マップを作り直してみるのも有効な手段です。
分析した結果や作り直したペルソナ設定から、さらに「何故この思考や行動から商品を選んだのか」「何故この層ではこういう回答が多かったのか」などの洞察を行い、多角的な視点から見つめなおすことが重要です。
インサイトはあくまで顧客の言葉や行動に隠された動機のことであって、顧客の言葉や行動そのものではないことに注意しましょう。
インサイトマーケティングの事例
フォルクスワーゲン(Volkswagen)
((出典:フォルクスワーゲン公式サイト)
1950年代のアメリカでは、「大きいことはいいこと(Think big)」という価値観が流布しており、自動車も大型車が当たり前という風潮でした。
しかし、当時の平均的な世帯人数は3人ほどという状況で、必ずしも大型車が必要なわけではありません。フォルクスワーゲンは、消費者たちは実用的な面ではなく「大きくなければ」という価値観に囚われて車を選んでいる、という点に注目しました。
そして1959年、フォルクスワーゲンは、小型車である「ビートル」のキャッチコピーに「小さいことが理想(Think small.)」という言葉を掲げます。
「大きいことはいいこと」と思い込み、実用的でない車を買っていた消費者に、状況に即して小型車を選ぶことも良い選択である、というメッセージを送ったのです。
この作戦は功を奏し、燃費も性能もいいビートルは飛ぶように売れ、「ビートルを買うのが賢い選択」という新たな価値観も生まれました。
「大きいことはいいこと(Think big)」という価値観が、自動車業界において必ずしも実情と一致していない点を見抜き、「小さいことが理想(Thing small)」という新たな価値観を生み出した、インサイトの成功事例です。
・「大きいことはいいこと」という価値観と平均世帯人数のズレを把握
・消費者が価値観に囚われて、余計なコストをかけている点に注目
・現状に即した「小さいことが理想」という価値観の創出と、それに沿った製品の売り出し
「Got milk?キャンペーン」
(出典:Got milk?公式サイト)
1990年代初頭のカリフォルニア州では、全体的に牛乳の消費量が落ち込み、売上が低迷していました。
カリフォルニア牛乳協会はその打開策として、「牛乳は健康にも美容にもいい」というプロモーションを行いますが、その印象が広まっても、あまり効果は出ませんでした。
そこで牛乳協会は、視点を変えて「牛乳を飲む人はどんな時に飲みたくなるのか」という行動要因を探ることにします。
普段から牛乳を飲んでいる人を集めて一週間飲むのを我慢してもらい、「いつ飲みたくなったか」を報告してもらうことで、牛乳への需要が高まる状況を調査しました。
そこで出た「パンやシリアルなどを食べる時に牛乳が飲みたくなる」という結果を元に、「牛乳が飲みたくなる食べ物」の隣に「got milk?(ミルクある?)」というメッセージを書いたポスターなどを展開します。
これによって、日常的に牛乳を飲んでいなかった人々も、「パンやシリアルを食べる時には牛乳をストックしておこう」と思うようになり、牛乳の消費量は格段に上がりました。
牛乳がいつ必要なのかというインサイトを見抜き、その状況に合わせてダイレクトにプロモーションを行い成功した事例です。
・「健康志向」「美容目的」などのプロモーションの失敗
・そもそも「いつ牛乳は必要なのか」という視点の転換
・「牛乳はパンやシリアルと共に飲みたい」という欲求に即したプロモーションの展開
いかがでしたか?
インサイトを見抜いて活用するために必要なのは、現状把握と調査、そしてそれらを多角的な視点で考えることです。当たり前のことに疑問を持ちながら、様々な方法で消費者の行動を集めて分析することで、まだ見えていない新たな価値観を作り出していきましょう。
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