株式譲渡契約書を作成したいけれど、どこに注意しどの項目を入れたらいいかわからない、と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、株式譲渡契約書を作成する前に確認すべき注意点と、記載すべき基本項目を解説します。
目次
株式譲渡契約書とは、株式譲渡の内容や条件が記載された書類のこと
株式譲渡契約書は、株式譲渡のための条件が明記された契約書です。株式は物の譲渡に比べ、譲渡後に生じるリスクが多種多様でトラブルにつながりかねないので、慎重に作成しなければなりません。
株式譲渡契約書の作成前に確認すべき点
対象会社が株券発行会社であるか
株式譲渡の対象会社が「株券発行会社」と「株券不発行会社」で譲渡時の法律上の手続きが違うので、事前にどちらか確認しましょう。場合によっては、契約が法律上締結できず無効となる場合があるので注意が必要です。原則、定款で確認しますが登記事項証明書で確認することもできます。
- 株券発行会社:会社の定款で株券を発行すると定めている会社
- 株券不発行会社:株券発行会社以外の会社
譲渡制限の有無
企業の中には、会社の定款で株式の譲渡について株主総会あるいは取締役会の承認を必要とするというルールを定めているものもあります。このように、譲渡に取締役会などの承認が必要な株式を譲渡制限株式といいます。譲渡の承認手続きをしなかった場合や、契約書に不備がある場合は株式譲渡契約が無効になりますので注意しましょう。譲渡制限の有無も、定款や登記事項証明書で確認できます。
株式譲渡の目的
株式譲渡契約書作成の際には、譲渡の目的により記載項目が変わってきますので事前に確認しましょう。
株式譲渡の目的は以下の場合があります。
- 会社内の社員に株式を分け与える
- 退職するメンバーから株式を買い取る
- 外部の協力者に株主になってもらう
- 会社を売却し現金化する(M&A)
株式譲渡契約書に記載する主要項目
1. 譲渡合意
まず、株式譲渡に関して主な内容を盛り込んだ譲渡合意の項目を作成します。法律上株式の金額は、双方が合意していればいくらであっても問題ありません。しかし、実際の株式の金額と譲渡金額に差がある場合は、課税上の問題があるので事前に税理士や会計士に確認しておきましょう。
具体的な記載内容には以下のものがあります。
- 株式譲渡の対象会社名と住所
- 譲渡対象となる株数
- 譲渡金額、代金
- 株式の種類
例)普通株式、譲渡制限株式など株式の種類
2. 譲渡代金の支払い等
次に、譲渡代金の支払方法と支払期日や振込先口座の情報などを記載します。さらに株券発行会社の場合は、支払と引き換えに株券を売主から買主に交付することを記載する必要があります。
3. 株主名簿の名義書換
次に、株主を把握するための帳簿である株主名簿の名義の、売主から買主への書換えについて記載します。
株券不発行会社の場合の株主名簿の書換えは、会社法第133条に記載され、第2項で定められている通り、買主と売主が共同で行わなければなりません。
4. 表明保証
次に、譲渡する株式について、売主が買主に対して保証する内容を記載します。
詳しい記載項目は以下の通りです。
- 売主が譲渡株式の保有者であること
- 譲渡する株式にその他第三者の権利が設定されていないこと
- 発行会社が従業員の雇用に関して違反をしていないこと
- 財務諸表に間違いが無く、記載に漏れがないこと
- 税金の不払いや滞納がないこと
- 訴訟や紛争がないこと
ただし、表明保証の契約条項は、株式譲渡の目的や自身が買主側か売主側かによって大きく書き方が変わります。
・買主の立場での表明保証記載の注意点
買い手は、なるべく多くの表明保証条項を組み込まなければなりません。買主が外部の場合、売主会社の財務内容や経営状態について、報告した内容を信用し株式売買をすることになります。万が一報告を受けた内容と異なる場合、損害賠償が請求できます。
・売主の立場での表明保証記載の注意点
売り手は、表明保証する内容を限定し無理な保証をしないように気をつけなければなりません。表明保証することができない内容や条件は、買主に説明し了承を得た上で、表明保証条項から除外しましょう。
5. 契約解除
売主側または買主側から契約内容などに虚偽があった際、契約を解除する場合についての定めを記載します。加えて、解除した場合の処理として、売主から買主への譲渡代金の返還と、解除原因について責任がある当事者の損害賠償責任について記載する必要があります。
一般的な解除事由は以下の通りです。
- 売主または買主が破産した場合
- 株式の譲渡が会社内で承認されなかった場合
- 買主が譲渡代金を支払わなかった場合
- 売主が株券発行会社の場合、株券を引き渡さない場合
- 売主が表明保証に違反した場合
- 取引の要件が満たされなかった場合
6. 損害賠償
売主、買主ともにどのような場合、相手側に損害賠償が請求できるのか記載します。特に買主側は、表明保証内容が譲渡された会社の経営と大きく異なっていた場合などに、売主に対し損害賠償請求できるように記載しておくことが重要です。また売主側は、賠償金額の上限や請求期間を設けるなどの契約条項を記載しましょう。
その他、一定期間売主が同種または類似の事業を行うことを禁止する「有業避止義務」、契約書で締結された内容について万が一トラブルがおきた場合に、どこの裁判所で審理を求めるのか定めておく「合意管轄」などの項目があります。必要に応じ、契約の内容や条件をもとに項目を盛り込みましょう。
印紙税は原則不要
平成元年4月以降、印紙税の課税が廃止されたため、基本的に株式譲渡契約書に印紙税を貼る必要はありません。
ただし、株式譲渡契約書に代金受領の記載がある場合は「○年○月○日、譲渡人は株式譲渡代金○万円を受領した。」などと記載し、収入印紙を貼る必要があります。
いかがでしたか?
今回は、株式譲渡契約書の作成前に確認すべき注意点と、記載すべき主要項目を解説しました。
株式譲渡の契約内容や条件により、株式譲渡契約書の内容が変わってくるので、この記事を参考にし、適切な契約書の作成に役立ててください。
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