モラルライセンシングとは？起こる要因と陥らないためのポイントを紹介

モラルライセンシングという言葉をご存じですか？
多くの方が経験したことのある「頑張ったから少しくらいだらけてもいいだろう」と思ってしまう状態などを指します。

今回は、モラルライセンシングの意味と起こる要因、陥らないためのポイントを紹介します。

モラルライセンシングとは、「よいことをすると悪いことをしたくなる」心理のこと

モラルライセンシングは、ノーベル賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した、「よい行いをしたら悪い行いをしてもいい」と感じる心理のことです。

モラルライセンシングは、以下のような流れで起こります。

モラルライセンシングに陥ると目標達成を妨げてしまう

モラルライセンシングは特別意識の高い人でなければ、誰でも陥るごく一般的な心理です。しかし、モラルライセンシングに陥ってしまうと、「合理的でなく筋が通っていないことをしてしまう」「自分の目標達成に対して正反対のことをしてしまう」など、目標達成に向けた行動を妨げてしまいます。

モラルライセンシングの具体例

日常におけるモラルライセンシングの具体例には、以下のようなものがあります。

モラルライセンシングが起こる要因

心理学的な要因

モラルライセンシングが起こる要因には、心理学的な現状維持バイアスが挙げられます。人間は「〜しなければならない」「〜したほうがよい」といったように理性的に考えますが、本能的には「このままの状態でもいいのではないか」と感じてしまうこともあります。これが現状維持バイアスであり、この感情を抑え込むほどの「変わりたい」「達成したい」というモチベーションがないと、モラルライセンシングに陥ってしまいます。

また、人間は「ルールや社会に縛られていたくない」という気持ちを持つことが一般的であり、道徳的に「よい」とされていることとは矛盾します。この気持ちに打ち勝てなかった場合も、モラルライセンシングに陥ってしまいます。

生理学的な要因

モラルライセンシングが起こる要因には、人間の理性を司る大脳新皮質が不活化することが挙げられます。人間は理性的・道徳的によいことをすると大脳新皮質が活性化します。しかし、大脳新皮質は常に活動し続けることができないため、一時的な休養が必要です。この時に理性が弱まり、モラルライセンシングに陥ってしまいます。

モラルライセンシングに陥らないためのポイント

自分の行動の目標や理由を再確認する

モラルライセンシングに陥らないようにするためには、自分の行動の目標や理由を再確認する習慣をつけましょう。モラルライセンシングは、目の前にある一時的な欲求を満たすために起こるので、行動の目標や理由を再確認する癖をつけると、目の前の欲求よりも長期的な目標達成に目を向けられ、モラルライセンシングを抑制できます。

ご褒美や対価を定量的な数値をもとに考える

モラルライセンシングに陥ることが避けられそうもない場合「よいこと」をしたあとに得られるご褒美や対価を具体的な数値に基づいて考えることが大切です。「よいこと」をしたご褒美として、何をしていいのかを具体的に考えましょう。

例えば、ダイエットをしている場合300キロカロリーを運動で消費したとします。この時「ダイエットを頑張ったので好きなものを食べてもよい」という気持ちになりますが、消費した分の300キロカロリー以下のお菓子なら食べても太りません。このように、定量的に見合ったご褒美を用意することで、モラルライセンシングに陥ったとしても、できるだけ負担を減らし目標を達成できます。

大脳新皮質へアプローチする

モラルライセンシングに陥る原因でも述べたように、人間の理性を司る大脳新皮質が不活化するとモラルライセンシングに陥ります。大脳新皮質が不活化するのを防ぐには、普段から論理的思考を心がけて大脳新皮質を鍛えることが挙げられます。

また、目標達成に影響しない範囲で欲望を発散し、大脳新皮質を休ませることも大脳新皮質の不活化を防ぐ方法として挙げられます。趣味や運動などを定期的に行うと、大脳辺縁系と呼ばれる情動の部分が活発に動きます。そのため、趣味などに取り組んでいる間は大脳新皮質を使わず休ませることができます。