「利用可能性ヒューリスティック」という言葉はご存知ですか?これは、人間が意思決定や判断を下す際に用いられる心理的な法則のことです。
今回は、利用可能性ヒューリスティックの意味や要因、ビジネスにおいての例を紹介します。
目次
利用可能性ヒューリスティックとは、思い出しやすい記憶情報を優先させて判断を下すという法則のこと
利用可能性ヒューリスティックとは、思い出しやすい記憶情報を優先させて意思決定し、判断を下すという法則のことです。認知心理学者のエイモス・トベルスキー氏とダニエル・カーネマン氏の共同研究によって発見されました。
最近起きたことや印象深いできごとは、人間の記憶の中でアクセスしやすい情報です。記憶に残っている情報ほど、頻度や確立を高く見積もってしまうため、一定の偏り(バイアス・思い込み)が生じます。
利用可能性ヒューリスティックを形成する要因
利用可能性ヒューリスティックを形成する要因には、以下のようなものがあります。
- 想起容易性
記憶する際に大きなインパクトを受けるため、思い出しやすい情報のことを指します。例えば、よく見かけるテレビCM、芸能人の結婚・離婚など話題性がある情報がこれに当たります。また、自然災害など世間の注目を集める事象も含まれます。 - 検索容易性
記憶の中から検索しやすい情報です。「いつものを買えば間違いがない」と判断する心理も検索容易性の一例です。 - 具体性
身近な人から聞いた具体的な話や自分自身が経験したこと、見たことのある情報です。具体的には、口コミサイトやブログ、SNSで得られる情報などがこれにあたります。
日常における利用可能性ヒューリスティックの例
私たちは、日常において利用可能性ヒューリスティックを用いて意思決定をしています。例えば、どこで食事をするかを考える際、身近な人の口コミやSNSの投稿などの記憶を元に、評価の高い店を選ぶ行動は「具体性」が要因の利用可能性ヒューリスティックです。いつも同じ店を利用するのも「検索容易性」が要因の利用可能性ヒューリスティックです。利用可能性ヒューリスティックには、判断が素早く行えるというメリットがあります。
一方で、利用可能性ヒューリスティックは好ましい判断のみにつながるわけではありません。例えば、交通事故や飛行機事故の現場に遭遇したり、ニュース映像を見聞きしたりして、車や飛行機に乗るのが怖くなってしまうのは、「想起容易性」を要因とした利用可能性ヒューリスティックです。このように思い出しやすい記憶情報を一般化してしまうと、不条理な結論に達してしまう場合もあります。
ビジネスにおいての利用可能性ヒューリスティックの活用場面
業務の優先順位を決める場面
ビジネスにおいて、具体的な作業が思いつかず何から手をつけてよいか分からなくなり、とりあえずできることから手をつけるといった行動も利用可能性ヒューリスティックの1つです。思い出しやすい記憶に頼り業務を進めていると、本来必要でない業務や見当違いなことをしてしまい、業務効率が低下します。
このような状況に陥らないよう、作業を始める前に「この仕事は何のためにするのか」「いつまでに終了させないといけないのか」「終了までに何をしなければならないのか」など、明確なゴール地点を定めてから作業にとりかかりましょう。
業務に関するリスクを洗い出す場面
新規事業を始める時には、期待が膨らみ、業務に関するリスクを十分に考慮できない場合があります。例えば、外部から思いがけない妨害が入ったり、想定外の出費により予算不足に陥ったりすることもあります。このようなリスクを過小評価してしまうことで、事業が順調に進んでいると錯覚してしまいます。
新しいことを始めるときには、利用可能性ヒューリスティックを理解し、業務に関するリスクを洗い出しましょう。
部下のモチベーションを上げたい場面
仕事で失敗してしまい落ち込んでいる部下のモチベーションを上げる際にも、利用可能性ヒューリスティックが活用できます。部下にとって失敗しても大丈夫と思わせるように「解決できない問題はない、起こらない」ということを伝えるとよいでしょう。
次に、今回起きたような失敗は滅多に起きないことを伝え、また起きるのではないかという不安を取り除き自信を取り戻させましょう。最後に、これからも大丈夫、うまくいくと声をかけモチベーション向上につなげます。
好感度を上げたい場面
他者からの好感度を上げたい時には、利用可能性ヒューリスティックによって起こる認知バイアス「単純接触効果」を利用するとよいでしょう。単純接触効果とは、接する機会が多い物や人を好きになってしまうという心理現象のことです。
例えば、営業パーソンであれば相手とのコンタクトを頻繁にとるようにします。また、マーケティングにおいては、SNSやブログの更新頻度を上げたり、広告を利用し社名やサービス名の露出を増やしたりしましょう。接触した時間の長さは関係ないため、短時間でも接触回数を増やすと効果的です。
単純接触効果についての詳細は、以下の記事をご確認ください。
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