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ジョブローテーションとは|実施目的やメリット・デメリットを解説
ジョブローテーションという人事制度をご存知でしょうか?かつては多くの企業で取り入れられてきましたが、終身雇用制度の崩壊によって捉え方が変化してきています。
この記事では、ジョブローテーションの実施目的やメリット・デメリット、ジョブローテーションに向いている企業の特徴について解説します。
目次
ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的として行われる戦略的な人事異動のこと
ジョブローテーションとは、社員の能力開発を目的として行われる戦略的な人事異動のことです。ただ単に人事異動を実施することではなく、長期間を見据えた人事戦略がある場合にジョブローテーションと呼びます。ジョブローテーションには、部署をまたぐ場合や勤務地が変更になる場合、同じ部署内で業務・職務内容が変更になる場合など、様々なケースがあります。
現在、日本では全体の半分以上の企業がジョブローテーションを取り入れており、正社員が多く規模が大きい企業ほど実施率が高くなっています。
日本企業にジョブローテーションが浸透した背景
従来の日本企業では、終身雇用を前提とした人材育成が一般的であったため、様々な立ち位置から社内を把握するゼネラリストを育成することが重要だと考えられていました。ゼネラリストは将来の経営幹部候補として期待され、主要部門の異動を繰り返して経験を積ませることがジョブローテーションの大きな目的だったと言えるでしょう。
しかしながら昨今の状況は大きく変化し、ゼネラリストではなく特定分野を専門とするスペシャリストの需要が増大しています。日本企業がゼネラリストを中心とした人材育成に重きを置いていたことからスペシャリストが育たず、仕事の高度化やIT化に対応できないという問題が浮き彫りになってきたのです。
ジョブローテーションを実施する目的
経営幹部候補の育成
ジョブローテーションを実施する大きな目的の一つが、経営幹部候補の育成です。とりわけ終身雇用が前提だった時代には、幅広い業務を経験し社内を俯瞰して見ることができるゼネラリストを育成するために、多くの企業に取り入れられ浸透したという背景があります。
経営幹部に求められるのは、様々な立ち位置から社内を把握できたり、企業の課題を適切に抽出できたりするといった能力です。ジョブローテーションは経営幹部候補にこれらの能力を身につけさせる目的で実施されます。
新入社員の育成とキャリア形成支援
ジョブローテーションは、新入社員の育成とキャリア形成支援といった目的でも実施されます。新入社員に複数の業務を経験させることでそれぞれの適性を見極め、配属に活かすという狙いがあります。
また、複数の部署・職務を経験することで新入社員が自分自身の適性を把握する機会も得られます。ジョブローテーションによって様々な業務を経験することが今後のキャリア形成を考えるきっかけとなり、自分の将来像を明確にイメージできるようになるでしょう。
属人化の防止
特定の社員が特定の業務に長く携わると、一部の社員しか業務内容を理解していないという状況が生まれてしまい、業務の属人化が懸念されます。これを業務ブラックボックス化と呼び、他の社員が業務をカバーすることが難しくなるため、業務の質が低下したりその社員が退職したときに後任者へノウハウが継承されづらくなったりするというリスクも生じかねません。
ジョブローテーションは属人化によって生じるこれらのリスクを回避するという目的でも行われています。
ジョブローテーションのメリット
企業側のメリット
- 適材適所の人事ができる
企業の生産性を向上させるためには、適材適所の人事を行うことが大切です。ジョブローテーションを行うことで社員一人ひとりの強み・弱みが明確になるため、適材適所の人材配置が可能になります。 - 部門を越えた人的ネットワークを構築できる
複数の部署と連携が必要なプロジェクトでは、今まで関わりがなかった人と仕事を進めていくことが難しい面もあるでしょう。ジョブローテーションを取り入れることで異動者がパイプ役となり、部署間の連携を円滑にできます。 - 業務を効率化・標準化できる
業務を標準化することは、属人化の防止にも役立ちます。ジョブローテーションを行うことで業務の引継ぎやマニュアル化が進み、ポストが空いた場合でも人員を新たに配置しやすくなります。
社員側のメリット
- 多角的な視点が持てるようになる
同じ企業内でもそれぞれの部署・職種がどのような働きをしているのか、経験してみないと分からないことも多いかと思います。ジョブローテーションを行うことで様々な立ち位置を経験し、多角的な視点を持てるようになります。 - 自分の適性を活かしたキャリアを形成できる
ジョブローテーション制度のある企業では、未経験の業務に挑戦できる機会が多くあります。複数の部署・職種を経験することで、自分の適性を見つけ、自分に合ったキャリアを形成できます。 - 他の現場でも応用できるスキルを習得できる
複数の部署・職種を経験することで、他の現場でも活用できるような応用が利くスキルを習得できます。また、今まで習得したスキルを組み合わせて今後の業務に活かすことも可能です。
ジョブローテーションのデメリット
企業側のデメリット
- スペシャリストの人材育成に時間がかかる
特定分野を専門とするスペシャリストを育成するためには、その分野に特化した教育を行う必要があります。しかし、長期間一つの分野に留まらず異動を繰り返すジョブローテーションでは、スペシャリストの人材育成に時間がかかるというデメリットがあります。 - 異動直後の社員のパフォーマンスが低下する
異動直後の社員は未経験で新しく覚えることが多いため、パフォーマンスが低下しやすくなります。また、戦力の高い社員が他の部署に異動した際は、前にいた部署のパフォーマンスが低下する可能性が高くなります。 - 教育に関わるコストが増大する
教育担当者を配置するコストが増大することもデメリットの一つです。また、ジョブローテーション制度がない場合と比較すると転勤に伴う費用も増加するため、この点に関しても注意が必要です。
社員側のデメリット
- 目的が不明瞭な異動によって、仕事への意欲が下がるおそれがある
ジョブローテーションを行う目的がはっきりせず、社員が納得する形で伝えられていないと仕事への意欲が下がるおそれがあります。その結果、パフォーマンスの低下につながる可能性もあります。 - スペシャリスト志向の場合、遠回りになる可能性がある
入社時点で既に得意分野があるスペシャリスト志向の人にとっては、ジョブローテーションを経験することで目標達成までに遠回りをしてしまう可能性があります。場合によっては、ジョブローテーションを断ることも視野に入れましょう。
ジョブローテーションに向いている・向いていない企業の特徴
ジョブローテーションに向いている企業の特徴
ジョブローテーションに向いている企業の特徴は以下の通りです。
- 中長期的に見て人材育成を行える体制がある
- 幅広い業務知識・経験が必要とされる業界である
- 事業展開が幅広く、多様な部署・職務が存在している
ジョブローテーションに向いていない企業の特徴
ジョブローテーションに向いていない企業の特徴は以下の通りです。
- 中長期的に見て人材育成が難しい環境である
- 各業務に高い専門性が必要である
- 異動できる部署・職種が少ない
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