この記事は 4 分で読めます
コミュニティを通じて企業のコアバリューを築く -コミュニティマーケティングのススメ
法人営業・BtoBマーケティングに携わるビジネスパーソンを支える「Musubuライブラリ」では、起業家やトップセールス・マーケターへのインタビューから、働き方や成果を上げるために大切なマインドなどをお届けしています。
今回は、イベント・コミュニティ管理プラットフォームとして知られるPeatix Japan株式会社(ピーティックスジャパン:以下、Peatix)の藤田さんに、Peatixで大切にしている「コミュニティマーケティング」についてお聞きしました。
なぜコミュニティマーケティングなのか?そもそもビジネスにおいてもコミュニティは有効なのか?イベントにとって冬の時代、コロナ禍を生き抜いた経験から、コミュニティの重要性について語っていただきました。
藤田 祐司(ふじた ゆうじ)
Peatix Japan株式会社 共同創業者/CMO
慶應義塾大学卒業後、インテリジェンス(現パーソルキャリア)で営業を担当。
その後、2003年にアマゾンジャパン(現アマゾンジャパン合同会社)に入社。最年少マネージャー(当時)としてマーケットプレイス事業の営業統括を経て、Peatixの前身となるOrinocoを創業。国内コミュニティマネージャーチームを統括した後、営業、マーケティング統括を兼務。
2019年CMOに就任し、グローバルを含めたPeatix全体のコミュニティマネジメント・ビジネスデベロップメント・マーケティングを統括。
目次
「出会いと体験を広げる」多くのユーザーに支持されるPeatix
創業メンバーとして立ち上げたイベント・コミュニティプラットフォーム
-まずは、Peatixについて教えてください。
Peatixは「出会いと体験を広げる」をミッションに、有志のイベントから大型フェスまで、さまざまなシーンで活用できるイベント・コミュニティ管理サービスを提供しています。2011年のサービス開始以降、日本をはじめ、アメリカ、シンガポール、マレーシア、香港など、27カ国で多くのユーザーに支持されています。
-藤田さんはPeatixの創業メンバーでいらっしゃるんですよね?
そうです。私自身は人材紹介のインテリジェンス(現パーソルキャリア)からキャリアを始め、その後Amazon Japanに転職をしました。その頃、今の創業メンバーと出会いました。その後、いくつかの事業の立ち上げを経て、2011年にPeatixのサービスを立ち上げました。
-Peatixではどのような役割を担当されていますか?
私はCMOとして、マーケティング&コミュニケーションズチームを統括しています。
Peatixのマーケティングチームは、「PR・広報」「デジタルマーケティング」に加え、コミュニティやイベントの主催者の皆さまと直接つながる「コミュニティパートナーシップス」から構成されています。
Peatixが実践するコミュニティマーケティング
つながりを作り、高める。コミュニティマーケティングの重要性
-コミュニティマーケティングとは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
一言で言うならば、「共通の関心を持つ人の集まりであるコミュニティを活用したマーケティング」ですね。コミュニティにはイベントのようなものだけでなく、SNSでの交流なども含まれます。
-ビジネスにおけるコミュニティについて、どのようにお考えですか?
もともとBtoC向けのコミュニティというのは多くありました。ここ数年はBtoB分野のコミュニティ、いわゆるビジネスコミュニティに注目が集まっているように感じます。
私自身もコミュニティを運営していますし、2年前には『「コミュニティ」づくりの教科書』という本を書かせていただきました。コミュニティをどのようにビジネスに活かすか、という文脈での発信に注目が集まっていると思います。
新しい人も参加しやすいイベントサロンの運営
-Peatixが実践するコミュニティマーケティングとはどのようなものでしょうか。
Peatixのサービスは、「主催者」と「参加者」の方々に利用いただいており、ある意味toBのサービスであり、toCのサービスでもある、両方の面があります。中でも我々にとっては、主催者の皆さまに多くのイベントで活用してもらうことが重要ですので、イベント主催者のコミュニティ作りに2013年から取り組んでいます。
-具体的には、どのようなコミュニティなのでしょうか?
30〜40名程度のイベント「イベントサロン」を、定期開催しています。
内容は、3〜5人の登壇者によるテーマに沿った講演のセッションがメインですね。オフライン開催の場合は、後半に懇親会も行っています。懇親会の時間はかなり長めにとっています。話を聞いて学ぶことはもちろん、その後の交流もとても重要だと考えているからです。
ポイントは、毎回テーマを変えていることでしょうか。同じようなテーマで開催し続けると、どうしても参加者の層に偏りが出てしまい、新しい人が入りにくい雰囲気が出てしまいます。なるべくさまざまなテーマを設けることで、毎回新たな参加者も入って来やすいようにしています。
参加者のロイヤルティを高めることで、新たな企業価値が生まれる
-そういったコミュニティ作りの目的はどこにあるんでしょうか?
大きな目的は、コミュニティに参加してくださる方、我々の場合は主に主催者の皆さま同士のつながりを作るということです。一般的に、自社サービスを使ってくださるクライアント様同士の接点は多くないと思います。そこで、あえて「つながりを作っていく」ということがポイントなんです。
我々の場合、主催者同士のつながりからナレッジのシェアや出会いが生まれ、情報や人の移動が加速していっています。すると、サービスやブランドに対してのロイヤルティが高まるのです。
-サービスへのロイヤルティを高めるのは、難しいイメージがあります。
コミュニティに参加することで、参加者はサービスの対価やナレッジを得ることはもちろん、コミュニティ主催者の活動への考え方や方向性、想いを受け取っていきます。そうすることで、参加者がそのコミュニティをよく理解して親近感を抱き、良き顧客となってくれるのです。そのようにしながら、顧客離れしにくい環境を作っていけるのだと思います。
数値で測るのは難しいですが、サービスの利用継続の可否を決める上で大切な要素となる、機能や価格に並ぶような「コアバリュー」を提供するサービスに作っていくことができる。それが、ビジネスコミュニティだと考えています。
コミュニティマーケティングを始める上で重要なこと
一歩ずつ着実に。まずは「小さく始めてキーワードを探す」こと
-コミュニティマーケティングを始めるときに重要なことは何でしょうか?
ビジネスコミュニティを作ろうと思ったとき、まずイベント開催を考える方が多いと思います。しかし、コミュニティの本質は、旗印やビジョンとそれに共感した人の集まりです。まずは旗印やビジョンの部分を明確に言語化することが大事です。
-具体的にはどのように進めるのが理想的だと思われますか?
はじめから大きなイベントをしようと考えず、3人〜5人の規模から開始してみるのが良いと思います。自社のコアなお客さまに集まってもらい、「なぜこのサービスを利用しているのか」「どのような部分がいいと思っているのか」など、ヒアリングする会を開くだけでいいんです。
そうすると、自分たちのバリューや、共感できるコミュニティのヒントになるキーワード見つかります。そういったキーワード探しのつもりで、最初は気負わずに始められる少人数にすると良いんじゃないでしょうか。
Peatixが目指すコミュニティマーケティングとは
不確実な時代だからこそ、エンゲージメントを重視する
-コミュニティマーケティングの重要性を理解できてきました。
このコロナ禍で不確実な時代、何が起こるかわかりません。だからこそ、事業やビジネスのコアバリューや競争力を高める上で、ビジネスコミュニティは大きな軸になるのではと考えています。
Peatixでも、コロナの影響で2020年には99%を占めていたオフラインのイベントが突然ほぼキャンセル状態になりました。大ピンチを迎えたとき、企業様やクライアントの方から「大丈夫ですか?」「何かできることはないですか?」「オンラインを加速させるためにこういうことを一緒にやりましょう」というようなお声を多くいただきました。
その中で我々も方向性を考え、流れを作っていくことができました。これは自社だけで考えていては、到底できなかったことです。
-コミュニティマーケティングへの強い想いは、そういったご経験もあってのことなのですね。
はい。ビジネスコミュニティで、いわゆるファンとの関係性が作れているかどうかということが、困難に直面した場合に大きく影響すると実感しました。
11年の活動を経たPeatixが、これから目指す先
-最後に、Peatixの今後の展望をお聞かせください。
Peatixは2011年5月にサービスを開始したのですが、東日本大震災の直後というタイミングでした。サービスの準備段階の計画では、インディーズの音楽シーンやエンターテイメントで使われることを想定していたんです。しかし、震災の影響でイベントができる状況ではありませんでした。
そのような中、震災復興のコミュニティやNPO団体がどんどん立ち上がって活動を開始していきました。そこで、Peatixとして、そんな皆さんを支援していこうというのがスタートになったのです。
Peatixの原点は、草の根の活動やロングテールの活動を支援していくところにあります。そうやって11年事業を展開してきましたが、今後もより幅広いジャンルのコミュニティをどんどんサポートしていきたいと考えています。
イベントの集客については、サービスの開発が進んで多くのことができるようになりました。加えて、もっと日常のコミュニティ活動を支援していけるようなサービスにしたいと考えています。
-藤田さん、お忙しい中ありがとうございました。