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リスクマネジメントの事例を紹介|リスクの種類や流れも解説
リスクマネジメントは、組織が直面する様々なリスクから損失を未然に防ぐための重要なプロセスです。
今回は、リスクマネジメントの概要や企業におけるリスクの種類、リスクマネジメントの流れや事例を紹介します。
目次
リスクマネジメントとは、組織に損失を与えるリスクを未然に防ぐためのプロセスのこと
リスクマネジメントとは、企業や組織が損失を最小限に抑えるため、事前に潜在的なリスクに対処するプロセスのことです。このプロセスを通じて、企業は将来の予測できない出来事に備えることができます。また、リスクマネジメントは国際標準化機構(ISO)によって国際的なガイドライン「ISO31000」が定められています。
(出典:「Risk management — Guidelines ISO31000」https://shahrdevelopment.ir/wp-content/uploads/2020/03/ISO-31000.pdf)
リスクマネジメントに関連する用語
- リスクアセスメント
リスクアセスメントとは、企業や組織が直面しているリスクを特定し、分析・評価するプロセスを指します。潜在的なリスクを洗い出し、その重要度や影響を評価して優先順位をつけます。リスクマネジメントにおいては、リスクアセスメントの結果を基に対応策を立てるため、重要な情報源となります。 - リスクヘッジ
リスクヘッジとは、リスク発生時の損失を軽減するために手段を講じておくことを指します。予期せぬ事態に備えることで、企業の安定的な経営をサポートします。リスクの発生に備えて対策を検討するのがリスクマネジメントで、実際にリスクが発生した際の損失に備えておくことをリスクヘッジと言います。 - クライシスマネジメント
クライシスマネジメントとは、予期せぬ危機や災害が発生した際に、危機を最小限に食い止めるための計画を策定することを指します。リスクマネジメントは事前にリスクを予測・回避することに主眼を置きますが、クライシスマネジメントは既に危機が発生した後の対応に焦点を当てます。 - 危機管理
危機管理とは、予期せぬ事態や災害に対処するための包括的な対策を指します。リスクマネジメントとクライシスマネジメントの両方の要素が含まれますが、危機管理はより広範囲にわたり、企業のあらゆる側面に影響を及ぼす危機に備えるための体制を整えることを目指します。
企業におけるリスクの種類
純粋リスク
純粋リスクとは、自然災害や事故など企業に損失や悪影響を与えるリスクのことを指します。企業が純粋リスクに直面した場合、損失を最小限に抑えるために対応策を講じることが重要です。例えば、火災保険や事故対応の訓練など、リスクを事前に想定して備えることが純粋リスクへの対応となります。
投機的リスク
投機的リスクとは、投資や事業活動に伴うリスクのことを指します。投機的リスクはリターンが期待値よりも低くなる可能性も含まれますが、同時にリターンを得るチャンスもあります。例えば、企業が新しい事業を立ち上げる場合、成功する可能性と失敗する可能性の両方があるため、投機的リスクが存在します。また、株式市場の変動や経済の変化によっても投機的リスクが生じることがあります。
投機的リスクに対しては、リスクとリターンのバランスを考慮してリスクを適切に管理することが重要です。慎重な分析や計画を通じて、リターンを最大化し、投機的リスクをコントロールすることが求められます。
リスクマネジメントの流れ
1. リスクを特定する
リスクマネジメントを行うにはまず、企業のリスクを特定します。これは、内部のプロセスや外部の要因によって引き起こされる潜在的なリスクを洗い出す作業です。例えば、自然災害や競合他社の動向など、様々な要素がリスクの発生原因となります。リスクを特定することで、その後の対応策を立てるための基礎となります。
2. リスクを分析する
特定したリスクに対して、詳細な分析を行います。これにより、リスクの原因や影響を理解することができます。リスクの発生確率や被害の大きさを評価することで、対応の優先順位をつけられます。また、リスクの要因や背景をより深く把握することで、効果的な対策の立案が可能となります。
3. リスクを評価する
リスクの分析結果をもとに、リスクの重要度や影響を評価します。リスクの程度を数値化することで、具体的な数値をもとにした判断が可能となります。高いリスクを持つ事象に対しては、特に優先的に対応策を立てることが求められます。リスクの評価は、リスクマネジメントの効果を最大化するために欠かせないステップです。
4. リスクへ対応する
リスクを評価した後は、適切な対応策を立案して実行に移します。リスクを回避・軽減するための対策を検討します。具体的な行動計画をあらかじめ策定しておくことで、リスクを最小限に抑えられます。また、リスクに対応する際には、他のリスクを引き起こさないように注意することも重要です。
5. モニタリングと改善を行う
リスクマネジメントは継続的な改善が不可欠です。リスクへの対応が実施された後もモニタリングを続け、新たなリスクの発生や既存リスクの変化に対応する必要があります。さらに、リスクマネジメントの効果を評価し、必要に応じて対策を修正・改善していきます。リスク環境は常に変化するため、柔軟な対応と持続的な改善が求められます。
リスクマネジメントの事例
潜在リスクに対するリスクマネジメント
潜在的なリスクとは、まだ発生していないけれど将来的に発生する可能性があるリスクを指します。企業が直面する可能性のある潜在リスクに対しては、リスクマネジメントの実施で未然に対策を講じることができます。
例えば、通信システムや情報処理システム、電子デバイスの製造・販売を行う富士通株式会社では、グループ全体のリスクマネジメント強化のため、取締役会が決定した「内部統制体制の整備に関する基本方針」に基づき、事業部門から独立した組織であるリスクマネジメント室に「リスク・コンプライアンス委員会事務局機能」を設置しリスクマネジメントに取り組んでいます。具体的には、事業活動において直面するさまざまなリスクを抽出・見直しし、重要なリスクを特定しています。そして、重要リスクの発生可能性や影響度、対策の進捗状況などを調査・分析・評価し、それらの情報を可視化して経営判断に活用しています。
(参照:「富士通株式会社 事業等のリスク」https://pr.fujitsu.com/jp/ir/policy/risk/)
情報セキュリティに対するリスクマネジメント
情報セキュリティに対するリスクマネジメントでは、社内の情報管理体制の強化、セキュリティ対策の徹底、社員の教育・意識向上などが重要な対応策です。また、システムの監視や脆弱性のチェックなど、セキュリティに関する継続的なモニタリングも行われます。
例として、訪問在宅介護・訪問看護サービスを行う株式会社ホスピタリティ・ワンでは、情報セキュリティの強化に取り組んでいます。個人情報漏洩などのリスクを避けるために、一般財団法人日本情報経済社会推進協会のプライバシーマークを取得しました。プライバシーマークの取得を目指す中でセキュリティ上のリスクに気付けたことに加え、従業員の情報管理に対する意識付けも合わせて行えました。
自然災害発生に対するリスクマネジメント
自然災害に対するリスクマネジメントでは、事前のリスクアセスメントと災害対策の立案が重要となります。例えば、地震が発生した場合に備えた、建物の耐震補強や非常用の避難経路の整備などが挙げられます。また、重要なデータのバックアップや避難計画の策定も、自然災害に対するリスクマネジメントの一環として行われます。
例えば、宮城県南三陸町で水産加工品の製造販売を行う株式会社カネキ吉田商店では、2010年に発生したチリ地震での津波警報をきっかけに、避難訓練や研修、地震や津波に対する注意喚起を実施していました。その結果、2011年に東日本大震災が発生したときには、従業員は速やかに避難できました。
しかし、その一方で工場や畜養場は津波により被災してしまいました。そこで、震災後の施設再建では浸水リスクの少ない場所を選び、資金面においては保険を見直して万が一に対しての備えを行いました。また、本業とは関係の薄い不動産部門への投資を極力控え、急を要しない負債を減らすなどの対策を通じて、リスクを減らし、安定した経営を目指しています。
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