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【基本】コンカレントエンジニアリングとは|メリットや必要な要素を解説
コンカレントエンジニアリングとは何かご存知でしょうか。製品の開発と製造を効率よくするために、多くの製造業でコンカレントエンジニアリングが実施されています。
今回は、コンカレントエンジニアリングの基本と、メリット・デメリットや必要な要素を解説します。
目次
コンカレントエンジニアリングとは、製品開発の工程で複数のプロセスを同時並行して行う手法のこと
コンカレントエンジニアリング(concurrent engineering)とは、製品の開発時間や製造コストを削減するために、製品開発工程で複数のプロセスを同時並行する手法です。製造工程における上流と下流を同時に進めるだけなく、製造自体を製品の設計や原料の調達と並行して実施します。
製品の設計と実際の製造では誤差が生じるものであり、製造時の結果を設計部門にフィードバックして、より良い製品を迅速に開発することができます。また、同様に原料に関しても、実際に製造することでより適した原料を調達するきっかけが生まれます。
コンカレントエンジニアリングが普及した背景
従来の製品開発の工程は、上流から下流に流れる滝をイメージしたウォーターフォール型開発と呼ばれていました。設計が完了してから必要な原料を調達し、原料が調達できたら製造を行うという形式です。しかし、これでは上流の工程が完了するまで下流が仕事を進めることができないという非効率性を解決するために、アメリカの自動車産業でコンカレントエンジニアリングの思想が生まれました。
日本でも大手自動車メーカーが先導して導入し、現在では幅広い製造業、特に部品の数が多い分野や開発のスケールが大きい分野で積極的に取り入れられています。また、中小規模の製造業においても、価格競争や開発スピードを改善するために、コンカレントエンジニアリングを導入する動きが見られます。
コンカレントエンジニアリングのメリット・デメリット
メリット:開発や製造のスピードが向上する
コンカレントエンジニアリングの最も大きなメリットは、開発・製造スピードが大きく向上することです。設計では完璧だと思えても、製造してみるとやっぱり違ったという事例が数多くあります。また、製造工程における上流プロセスの完了を待ってから下流プロセスを進める方法では、全体として長い製造時間を要します。
コンカレントエンジニアリングでは、設計や製造、製造の中でも上流と下流を同時並行で進めるため、理論と現実の誤差を即座に埋める開発や、無駄なく継続的な製造を実現することが可能です。これにより、納期削減や短い期間での大量生産を可能にして、人件費を大幅に削減できるほか、競合に負けないスピードでの製品販売につなげられます。
デメリット:開発工程が停滞するリスクが高まる
コンカレントエンジニアリングでは、設計から製造までの開発工程全てを一元で管理する必要があります。従来のプロセスよりも多くの部門間で連携して計画を立てる必要があり、情報共有や開発計画に関するルールを明確化しなければ、いずれかのプロセスに問題が生じた場合全てのプロセスを停止せざるを得ません。
また、このリスクを回避するためには開発工程の上流から下流までで、全ての部門が連携をとる必要があります。円滑なコミュニケーションを実現するためには、自身の専門分野に留まらず、お互いの知識を習得することも必要です。
コンカレントエンジニアリングに必要な要素
ITツールの深い知識
コンカレントエンジニアリングでは、開発工程における全ての部門がそれぞれの進捗状況や成果を共有するために、ITツールの利用が欠かせません。また、効率よく設計開発を進めるためのITツールも不可欠で、これらを使いこなす知識を身につける必要があります。
製造業における開発工程では4つのITツールがよく用いられます。
- CAD(Computer Aided Design)
製品設計や図面作成をコンピュータ上で行うためのツールです。紙とペンを使った設計よりも正確に、かつ素早く設計ができるため、製品の品質を向上させるとともに、設計費や設計期間を削減することができます。 - CAM(Computer Aided Manufacturing)
生産工程の制御をコンピュータ上で行うためのツールです。CADで設計した製品を製造するための製造機や加工機を、自動で制御することができます。 - CAE(Computer Aided Engineering)
製品そのものや製造工程品質を評価するための数値解析・シミュレーションツールです。CADで設計した製品データから、製品の品質を評価できます。 - PDM(Product Data Management)
製品の設計や製造管理におけるデータを一元管理するためのシステムです。CAD・CAM・CAEのデータを格納するとともに、開発プロセスの進捗状況や部品表、設計で変更した箇所の履歴情報などを管理することができます。複数の部門で連携が求められるコンカレントエンジニアリングには欠かせないツールです。
部署間の密なコミュニケーション
コンカレントエンジニアリングでは、設計開発・原料調達・生産技術開発・製造・品質保証・物流といった設計から製造までに関わる全ての部署が連携し、いずれかに問題が生じた場合、全体で計画を見直す必要があります。これを円滑に行うには、製品の開発工程全てで計画を一元管理するとともに、部署間の日頃からの密なコミュニケーションが欠かせません。
そのためにも、研修などを通して設計開発の担当者に製造現場の経験を積ませたり、逆に現場担当者に設計業務の経験を積ませたり、部署間の連携を取れる工夫や、お互いの立場を想像できる関係性を構築するための工夫を施すことが重要です。
緻密な開発計画
コンカレントエンジニアリングでは、設計や製造といった開発工程を同時に進めるため、どこかのプロセスが停滞することのないよう緻密な開発計画を立てる必要があります。特に、いずれかのプロセスに問題が生じた場合のことも考えた計画を立て、開発工程全体がストップしないよう心掛けましょう。
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