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コーポレートガバナンス・コードとは|特徴や基本原則、改訂された補充原則を解説

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コーポレートガバナンス・コードという言葉をご存知ですか?これは、企業統治に関する基本的な原則や指標をまとめたものです。
今回は、コーポレートガバナンス・コードの概要や特徴、基本原則、2021年に改訂された補充原則について解説します。

コーポレートガバナンス・コードとは、企業統治を行うための原則や指標をまとめたもの

コーポレートガバナンスとは上場企業が透明性、責任、公正さを保ちながら適切に経営されるための仕組みや原則を指します。これを具体化したものがコーポレートガバナンス・コードです。コーポレートガバナンス・コードは企業が適切な経営を行うために、経営陣や取締役会によって遵守されるべき内容を、金融庁と東京証券取引所が合同でまとめたものです。Corporate Governanceの頭文字を取り、CGコードと呼ばれる場合もあります。

コーポレートガバナンスの詳細は、以下の記事をご参照ください。

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コーポレートガバナンス・コードの2つの考え方

プリンシプルベース・アプローチ

コーポレートガバナンス・コードは、プリンシプルベース・アプローチを採用しています。プリンシプルベース・アプローチとは、企業統治の指針を原則や価値観に基づいて提示し、企業がその状況に応じて適切な対応を取る考え方です。プリンシプルベース・アプローチは、具体的なルールや規制ではなく、原則に基づいて自主的な経営改善を促すことを重視しています。企業はこれらの原則を理解し、自社の状況に合わせて適切に運用することが求められます。

コンプライ・オア・エクスプレイン

コーポレートガバナンス・コードでは、コンプライ・オア・エクスプレインという考え方が採用されています。コンプライ・オア・エクスプレインとは、実施しなければならないコーポレートガバナンス・コードの内容を遵守していない場合、実施しない理由を証券取引所に説明することが求められるという原則です。透明性を保ちつつ、なぜそのような判断を下したのかを説明することで、投資家やステークホルダーの信頼を維持します。

コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則

コーポレートガバナンス・コードは以下の5つの基本原則によって構成されています。また、5つの基本原則に加えて、31の原則、47の補充原則、合わせて83の原則が示されています。

(出典:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード 〜会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~ 」https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/nlsgeu000005lnul.pdf

株主の権利・平等性の確保

 

上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

株主はその意見や権利を尊重することが重要であるという原則です。コーポレートガバナンス・コードでは、株主の権利を平等に守ることが求められており、どの株主も同じ情報や機会を持ち、投資に関する意思決定ができる環境が整えられるべきであると示されています。

株主以外のステークホルダーとの適切な協働

 

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。 取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

コーポレートガバナンス・コードでは株主だけでなく、顧客や従業員、地域社会などのステークホルダーと協力関係を築くことが大切であるとされています。企業は利益追求だけでなく、長期的な持続可能性や社会的責任も考えながら経営を行うことが求められます。

適切な情報開示と透明性の確保

 

上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。

投資家やステークホルダーは、企業の情報を知ることで安心して関われます。そのため、コーポレートガバナンス・コードでは企業が適切な情報を開示し、透明性を維持することが強調されています。業績やリスク、経営方針など、投資判断に必要な情報は適時提供されるべきであると示されています。

取締役会等の責務

 

上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、(1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと(2)経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと(3)独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は 監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。

取締役会は企業の舵取りを行う重要な役割を果たしています。コーポレートガバナンス・コードでは、取締役会が適切な監督機能を持ち、経営方針の策定やリスク管理、法令遵守などの責任を果たして、企業の健全な運営を確保することが要求されています。

株主との対話

 

上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

株主とのコミュニケーションは、企業と投資家との信頼関係を築くために不可欠です。コーポレートガバナンス・コードでは、株主との対話を重視し、株主の意見や要望を理解することが強調されています。定期的な株主総会や情報提供を通じて、透明なコミュニケーションを確保することが大切です。

2021年に改訂された補充原則

2021年コーポレートガバナンス・コードの改訂によって、新たな補充原則が導入されました。

(出典:日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」:https://www.jpx.co.jp/news/1020/20210611-01.html

取締役会の機能発揮

 

■プライム市場上場企業において、独立社外取締役を3分の1以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討を慫慂)
■指名委員会・報酬委員会の設置(プライム市場上場企業は、独立社外取締役を委員会の過半数選任)
■経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表
■他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任

2021年の改訂では取締役会が積極的に機能することが強調されました。具体的には、専門知識を有する取締役の配置や、議題の適切な設定が求められます。これにより、企業の経営戦略やリスク管理がより効果的に行われることが期待されます。

企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

 

■管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定
■多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表

企業が持続的な成功を収めるためには、多様性が重要です。2021年の改訂では、企業の中核人材における多様性の確保が新たな補充原則として導入されました。性別や国籍、経験などの違いを尊重し、異なる視点を取り入れることで、より創造的な意思決定や経営戦略の策定が可能となります。

サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取り組み

 

■プライム市場上場企業において、TCFD又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実
■サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示

環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する課題は、企業が持続的な成長を追求する上で欠かせません。企業が中長期的な持続可能性を考慮した取り組みを行うことが求められています。具体的には、環境への配慮や社会的責任、良いガバナンスの実現など、幅広い領域での取り組みが促進されます。

上記以外の主な課題

 

■プライム市場に上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反管理のための委員会の設置
■プライム市場上場企業において、議決権電子行使プラットフォーム利用と英文開示の促進

上場企業だけでなく、関連する子会社や海外子会社などのグループ会社においても、ガバナンスの強化が重要だと示されています。企業が単独で取り組むコーポレートガバナンスに加えて、グループ内での統治を「グループガバナンス」と呼びます。

さらに、株主が自身の権利を行使できる環境を整備するために、情報提供の向上が強調されています。具体的には、必要な情報を提供するための議決権電子行使プラットフォームの整備と、英語で情報を開示することが必要です。

コーポレートガバナンス・コードを遵守しないとペナルティを受ける場合がある

コーポレートガバナンス・コードでは、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方が採用されているため、各原則を実施しない場合、上場会社はその理由を報告書で説明することが上場規則で定められています。

原則を実施しないことに対する罰則は設けられていませんが、企業がコーポレートガバナンスに関する報告書での説明を怠った場合、公表措置などの対象となるおそれがあります。上場会社が企業行動規範に違反し、改善が必要であると認められると、証券取引所にその後の経過と改善措置に関する情報を提供するための改善報告書の提出を求められる場合があります。

また、証券取引所からの指示があるにもかかわらず、企業が改善報告書の提出に応じない場合、上場契約の重大な違反を犯したと見なされ、上場廃止の対象となるおそれがあるため注意が必要です。

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