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モチベーション理論とは?代表的な理論やビジネスでの活用法を解説
モチベーション理論という言葉をご存じですか。これは、人のやる気に関する理論の総称です。
この記事では、モチベーション理論の代表例やビジネスでの活用法を解説します。
目次
モチベーション理論とは、人がどのように動機づけされてやる気が高まるのか研究した理論のこと
モチベーションとは、人の行動を引き起こし方向づける内的要因のことで、動機づけともいいます。モチベーション理論とは、人がどのように動機づけされ、やる気が高まるのか研究した理論を指す言葉です。
ビジネスにおいて社員のモチベーション向上は重要であり、組織の成果や企業全体の業績にも影響を及ぼします。そのため、モチベーション理論は古くから研究されており、現代でも様々な理論が発展しています。
モチベーション理論の多くは欧米人を前提としている
モチベーション理論の多くは、アメリカ人がアメリカ人を対象として研究し考案したものです。そのため、アメリカ人の性質や文化が理論の前提となっている場合があり、文化的に異なる日本社会でそのまま適応できるとは限らない点に注意する必要があります。
古典的なモチベーション理論
モチベーション理論は1950年代に研究が進み、「マズローの欲求5段階説」「ハーズバーグの2要因理論」「マクレガーのX理論・Y理論」などが提唱されました。これらには否定的な意見もありますが、普遍的な要素が多く含まれており現代のモチベーション理論の礎になっています。古典的なモチベーション理論では、人が何によって動機づけされるのか、という動機づけの内容に着目していました。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求を5段階のピラミッド構造に整理する考え方です。具体的には、最も基本的な生理的欲求が最下層にあり、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求と高次になっていきます。低次の欲求が満たされることではじめて、より高次の欲求が出現します。
置かれている状況・立場によって欲求は変化するため、それぞれの社員に合わせてどの欲求を満たすべきか見極めることがモチベーション向上には重要です。
マズローの欲求5段階説については、こちらの記事も参考にしてみてください。
ハーズバーグの2要因理論
ハーズバーグの2要因理論とは、仕事に満足感をもたらす動機付け要因と、不満足を感じる衛生要因はそれぞれ独立して存在しているという理論です。アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏が労働者を対象とした実験を通して理論をまとめ、1959年に発表しました。
実験では、「仕事でどのようなことに幸福や満足を感じたか」と「どのようなことに不幸や不満足を感じたか」という2点を被験者に質問しました。その結果、1つ目の質問に対しては、昇進や昇格、承認されることや何かを達成することといった回答が得られました。これらは動機付け要因と呼ばれ、仕事内容に関するものが多くなります。一方、2つ目の質問には、給与や対人関係、会社の管理方法、労働条件といった回答が得られました。これらは衛生要因と呼ばれ、職場の環境に関するものが多くあります。
動機付け要因と衛生要因は独立しているため、動機付け要因が満たされなかったとしても不満は生じませんが、衛生要因が満たされないと不満が生じてしまいます。一方で、動機付け要因が改善されるとモチベーションが向上しますが、衛生要因を必要以上に改善してもモチベーションは向上しません。部下が不満を抱えることなくモチベーションが向上できるように、2要因に対して適切にアプローチしましょう。
マクレガーのX理論、Y理論
マクレガーのX理論・Y理論は、人間の持つネガティブな部分(X)とポジティブな部分(Y)に基づいて管理方法を分析した理論で、マズローの欲求5段階説から影響を受けています。
X理論は、人間が持つネガティブな側面に基づいており、「人は本来怠け者で、できれば働きたくないと考えている」「野心や責任感に乏しい」「強制・命令されないと努力しない」とされます。そのため、X理論では、労働者を管理するには強制や命令、罰則によって抑圧的に対処したり、賃金を高くするといった報酬を与えたりする必要があると考えられています。
Y理論は、人間が持つポジティブな側面に基づいており、「人は仕事がしたくないわけではない」「自分の能力や可能性を発揮したいと考えている」とされます。そのため、Y理論では、権限の一部を移譲するなどして自己実現ができるように管理すると良いと考えられています。
人間はXとYの相反する側面を持ち合わせているため、双方を考慮したマネジメントが必要です。特に、モチベーション向上に関してはY理論が重要であるため、主にY理論に基づいてマネジメントを行い、X理論による対処方法を適宜取り込むのが望ましいと考えられています。
現代のモチベーション理論
現代では、古典的なモチベーション理論をもとに、「ブルームの期待理論」や「マクレランドの欲求理論」などが発展しています。古典的なモチベーション理論は動機づけの内容に着目していたのに対して、現代のモチベーション理論では人が動機づけされる過程に重きを置いています。
ブルームの期待理論
ブルームの期待理論は、「結果への期待値」と「報酬への魅力」が目標達成へのモチベーションにつながるという理論で、ビクター・ブルーム氏が1964年に提唱しその後ステファン・ロビンス氏によって広められました。
ブルームの期待理論では、モチベーションの高さは「期待 × 誘意性 × 道具性」という公式で求められると考えます。「期待」とは取り組むことで得られる結果や報酬に対する期待値を指し、「誘意性」は報酬に対して感じる魅力を指します。そして、「道具性」は目標達成の結果がさらに上の目標を達成するためにどのくらい有用かという度合いを意味します。
モチベーションはこれらの3要素の掛け算であるため、どれか1つだけを改善するのではなく、3つ全てを高めることがモチベーション向上には重要です。
期待理論については、こちらの記事も参考にしてみてください。
マクレランドの欲求理論
マクレランドの欲求理論とは、従業員には達成動機(欲求)、権力動機(欲求)、親和動機(欲求)という3つの主要な動機・欲求が存在するという理論です。アメリカの心理学者デイビッド・マクレランド氏が1976年に提唱したもので、のちにマクレランド氏自身が回避動機(欲求)を追加して4つの動機・欲求からなると修正しました。
達成動機とは、前回よりも効率的に、上手く物事を成し遂げたいという動機・欲求を指します。達成動機の強い人は個人的な進歩に関心があるため、何事も自分で行うことを望みます。また、成し遂げた成果に対するフィードバックを早期に欲しがるという特徴があります。
権力動機とは、他の人に影響を与えてコントロールしたいという動機・欲求を指します。権力動機が強い人は責任が与えられることを楽しみ、他人から働きかけられたり指示されたりするよりも他人をコントロールし影響力を行使することを望みます。また、競争が激しく、地位・身分が重視される状況を好みます。
親和動機は、周囲の人と友好で親密な関係を構築・維持したいという動機・欲求です。親和動機が強い人は他人に好かれたいという願望が強く、人の役に立とうと努力します。一方で、心理的に緊張する状況に1人で置かれると耐えられなくなる傾向があります。
回避動機は、失敗や困難な状況を回避したいという動機・欲求です。回避動機が強い人は、失敗を恐れるあまり適切な目標を避けたり、批判を恐れて周囲に合わせたりします。また、主体的に行動することができず、生産性のある行動を取りづらいという特徴があります。
この4つの動機・欲求は状況に応じて複雑に絡み合っていますが、モチベーションを向上させる上でどのような欲求を持っているのか見極めることが有効です。1on1ミーティングやアンケート調査を行いどの動機・欲求を重視しているか聞くことで、各々に合ったアプローチ方法を考えられます。